台湾は、中国語圏において史上初にして唯一の民主主義国であり、過 去 3 回の平和的な政権交代が成され、2 01 9 年には同性婚が合法化されました。すなわち台湾は不可能なことが可能になる国だと言えるでしょう。 だからこそ台湾はサステナブル経済に移行できると、私は信じています。
2010年、台湾の大学で私は経済学を履修していましたが、そこで学んだのは、効用と利益を最大化することでした。私は需要供給曲線に夢中 になって、方程式のなかで何かを見逃していたことを理解していません でした。その後、イギリスの大学に 4 年間留学してサステナブルな経営を 学んだとき、「環境への影響」と「社会への影響」が「財務への影響」と同じくらい重要であるという「トリプルボトムライン」に目が覚めました。 企業には、ネガティブな経営上の影響をすべて排除する責任があるのです。 イギリスのスーパーマーケットでは、消費者に対してより多くの選択肢があることを目の当たりにしました。フェアトレードやオーガニック、人 道主義に基づく植物由来の製品など、その多くは台湾では見たことのな いものでした。
イギリスの消費者は、自分たちが購入する製品に対する 意識が高いのです。こうした経験から台湾の暮らしを振り返ってみたのですが、サステナビリティという考えがとても過小評価されていました。 企業はサステナビリティに真剣に取り組んでいないし、私たち消費者は 価格にばかり目を向けて、値札の裏に隠された真実を無視しています。
台湾だってもっとできることがある。私はそう思いました。だからこそ、 サステナビリティに関するコンサルタントになって、台湾にも持続可能な ビジネスというアイデアを広めようと決意したのです。この道を歩みだし てから、幸いにも志を同じくするたくさんの人と出会えました。若い世代 はこの問題に、これまで以上に情熱を持っていることも分かりました。
そうした多くの人々の努力のおかげで、サステナビリティに対する台湾 のスタンスはこの 5 年間でかなり改善されました。今ではアジアでも E SG(環境・社会・ガバナンス)開示がトップレベルの国の一つとなり ました。しかし、まだまだ十分ではありません。私はこれからも、台湾の企業がこの島を今後も大切にしていくように働きかけていくつもりです。 力を合わせれば、私たちは「フォルモサ」の名にふさわしい美しい島 のまま台湾を残していくことができるでしょう。