アルバニア人とセルビア人。コソボでは二つのコミュニティは今も分断 されたままです。コソボ紛争は終結したものの、紛争の過去と民族間の 隔たりに基づくパラレルな教育制度に阻まれ、この国に住むアルバニア人とセルビア人の若者はコミュニケーションを取ることさえ少ないです。 さらに、ロマ人、エジプト人、アシュカリ人といった少数派コミュニティに対する差別も根づいています。これらのコミュニティの若者の生活状 況は悪く、低い就職率にさらされています。彼らは早くに学校を退学し、 街に繰り出してごみを集めたり、物乞いしたりすることを余儀なくされているのです。そんななか、私たちは疎遠になっているそれぞれのコミュ ニティをまとめ、コソボを真の多民族国家として成長させることを夢見て、Kosovo Youth Festival というプロジェクトを始めました。
2 0 年ほど前に戦い、分断された二つの民族で生まれ育った私たちは、 ゆっくりと信頼関係を築いていきました。初めて出会ったのは 2015 年、大学に入学したばかりの頃。最初の会話は授業のことでした。共通の話 題をきっかけに、さらに個人的なことを話すようになり、自分たちの過 去も含めたデリケートな会話も徐々に気楽にできるようになっていきました。
ディエルザ(写真右)は、1999 年の紛争でアルバニア人が大きな被害 を受けたドレニツァ地方の出身。一方、アンドジェラ(写真左)は、セル ビア人が多く住む町グラカニツァの出身です。私たちは紛争時にアルバニ ア人家族が経験したこと、同時期にセルビア人家族が経験したことをお互 いに共有することができたのです。言うまでもなく、こうした話は大学 の授業よりも学びに満ちたものでした。
コソボでは民族間のコミュニケーションが不足しているため、人々は一 方の話しか聞くことができず、悲劇の全体像を知ることがなかなかでき ませんでした。しかし、自分のコミュニティだけで語られてきた証言だけではいけないと、私たちは気づいたのです。民族を越えて若者を団結させ るための新しい方法が必要です。アルバニア人、セルビア人、ロマ人、エ ジプト人、アシュカリ人、トルコ人、ボスニア人を一つにする最良の方法は何でしょうか? そう、おいしい民族料理、お酒、音楽にダンスです! これらを楽しむイベントを開催しようというアイデアが生まれました。
Kosovo Youth Festival はコソボが持つ文化的多様性を表現する場であ り、参加者がコソボのすべてのコミュニティの共通点と違いを学び合う場 です。民族の壁を越えたたくさんの新しい友情を育む実りある土壌となっ ています。これまで 2 018 年と 2 019 年の 2 年にわたって開催されており、 とても活気に満ちたポジティブな空間をつくり続けています。もちろん、年に一度のフェスティバルとして開催することを目標としています。 バルカン半島だけでなく世界中で、文化が社会を分断する手段として使 われています。しかし、私たちは、文化の多様性はポジティブで美しくカ ラフルだと知っています。コソボのすべてのコミュニティ、そして世界中 の若者たちがともに手を取り合うために、多民族社会のポジティブな側面に目を向けなければなりません。私たち若者は、お手本となることが できます。私たちはこの世代の未来であり、平和構築者であり、私たちの多様性と違いが私たちをより強くしてくれるのです。