世界市民への開花はすぐそこに

アフリカと呼ばれる、この世界の一角で私は生まれました。素晴らしい 文化と社会の歴史を持つ大陸です。ごく幼い頃から、この大陸にあふれる 偉大な文明の数々に惹きつけられ、書物を通してさまざまな物語や言い 伝えの世界を旅してきました。ある文化で当たり前に行われている儀式 がどうして別の文化で禁止されているんだろうと私はいつも不思議に思い、自分でも知らないうちに世界の多様性のなかに、足を踏み入れていた のです。

1990 年のインターネットの到来により、あらゆるものが接続され、新 しい世界への窓が開かれました。私にとって、このことは書物の世界から 飛び出し、他者からより多くを学び、友情を結ぶことのきっかけとなり ました。私はオンライン上で多くの人との対話を重ねると同時に、10カ国以上を旅しました。

この探求はやがて、仲間とともにドキュメンタリーを制作するという想いに結実しました。題材は、ガボンの辺境に住む偉大な市民と彼らの文明。 そして、いかに政府が市民のことを忘れ、基本的なインフラを提供してい ないかということ。為政者と闘う人々の危険な状況を撮影しました。私た ちを歓迎し、カメラの前で自分を表現しようとする彼らの熱意は、心に深く刻みつけられています。

すべての市民が自らの国のなかで居心地良く感じられるように、議論と意思決定に参加できるようにする必要がある。議論の場に市民が必要な こと、公正な社会はそんな市民で成り立っていることを、私は撮影を通じ てはっきりと理解しました。そして、市民と市民社会のあるべき姿を広く世界に知らせ、すべての人々が意思決定にかかわれるような世界を築く ことが私の夢になりました。

今、人類は、進化を続ける ICTという技術を手にしています。ICT を 活用すれば、誰もが世界中を旅し、どこに住んでいても必要な情報やさ まざまな支援を受けられるようになります。つまり、すべての人が世界市 民として一つの大きな社会をつくることに参加しうるようになったので す。私たち一人ひとりが公正であることに努力を惜しまない市民になれれ ば、人類は思想や文化の違いを乗り越え、力を合わせることができるよう になるでしょう。すべての人が知恵を与え合うという、多様性にあふれた文化の開花はもうすぐそこまで来ている。私はそう信じています。

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