私は幸運にもローマの裕福な家庭に生まれた。両親、特に母は “prima il dovere poi il piacere”(義務を先に、楽しみは後回し)という格言をいつ も繰り返していたのをよく覚えている。父は、私が 6 歳の頃から本をよく 与えてくれるようになった。大きくなるにつれ、教育は自己実現の最良の 方法の一つと考えるようになり、それはずっと私の頭から離れることはなかった。
17 歳のとき、こんなことがあった。私はローマのサッカー・クラブチームであるラツィオ・ユースに所属していたのだが、平日の午前中に練習が 入ることがあった。学校を休むのは嫌だったが、練習には参加したい。チー ムメイトにどうしているのか聞くと、そんなことは大した問題じゃないと言う。彼らは親を経済的に助けるために、すでに学校を辞めていたのだ。 このことがきっかけで、貧困から逃れるために学校を辞める子どもが大勢 いることを知った。やがて私は、多くの人が戦争や貧困、社会的不公平の ために十分な教育を受けられず、私のように恵まれているわけではないこ とにも気づいた。すべての人が適切な教育を享受するには、世界は平和で 平等な場所でなくてはならない。その実現が私の夢となった。
2017 年には世界中の学生とともに雑誌「Eutopya」(現在はポッドキャ ストに移行)を立ち上げた。さらに 2019 年からジャンフランコ・ラバー シ枢機卿が議長を務める、バチカン内の機関の一つ、文化評議会の青年評議会にも参加している。 バチカンはカトリック教会の中心であり、ローマの市民は深い敬意を払っている。私はバチカンの国民ではないがカトリック教徒であり、ローマ教 皇の説教を聞きに、サン・ピエトロ広場に何度も足を運んだ。また、文化 評議会はカトリック教徒だけでなく、さまざまな信仰や文化、経歴を持っ た人々との対話を推進している。これは、バチカンの素晴らしく革新的な 要素だと思う。
私が参加する青年評議会は政治的信条、宗教的信仰、社会的実績に関係 なく、若者たちが議論できる場である。政治や倫理、宗教といった人生で非常に重要な問題について、広く若者の関心を喚起する方法を探っている。 最近では新型コロナウイルスが若者の生活に及ぼす影響についてメンバー みんなで話したが、歴史学や政治学、芸術などそれぞれのバックボーンに 基づいた視点を持ち寄って刺激的な議論ができた。私たち若い世代が力を合わせれば、すべての困難を乗り越えることができると感じた瞬間だった。
最大の変化とは具体的な形を伴って現れるわけではないだろう。例えば、
このパンデミックが終われば、私たちは今までとは違った方法で人生や世 界にアプローチし、次第に新しい働き方や学び方を受け入れるようになる。 変化は、世代を継いで実現されていくだろう。そして、私たちはあらゆる 困難を乗り越え、公正で誠実な世界という夢を実現する最初の世代になる。 私はそう信じている。