自分たちのアイデンティティやルーツを知ることが、国にとってどんなに 大事かを理解し始めてから、故郷の村に文化を取り戻すことが僕の夢になり ました。僕が生まれた国、カーボベルデはかつてポルトガル帝国の植民地でした。その影響は僕たちの文化に表れ、そのせいで複雑で、理解しづらくなっ ています。
小学生の頃から先生たちはよく、僕たちはヨーロッパ人なのかアフリカ人 なのか、と質問したものでした。しかし驚いたことに、答えはどちらでもなかっ たのです。僕たちはヨーロッパ人と呼ばれることにも、アフリカ人と呼ばれ ることにも納得しなかったので、簡単には答えられませんでした。アフリカ 大陸の西の沖合に位置し、アフリカ連合に属してはいても、僕たちはカーボベルデ人なのです。 「僕たちは何者なのか?」「僕たちはどこから来たのか?」という問いに納得のいく答えを見つけられなかったことで、文化を知りたい、理解したいと いう想いがますます強くなりました。分かっていたのは、僕たちの国は植民 地化によって誕生し、ポルトガルとアフリカの文化や人種が混ざり合い、そ して「クレオール」として知られる新しい人種を生んだということだけだっ たからです。
こうした不確かさから離れて、僕は大学の翻訳・異文化研究プログラムで 学び始めました。2017 年には、チェコに留学して ERASMUSプログラムに参加しました。そこで世界中から集まった学生たちと過ごしたことで、 僕は彼らの文化背景をより良く知ることができたのです。彼らの料理を食べ たり、言葉を少し学んだり、一緒にパーティに行ったり、近隣の国を旅したり。
このときに僕は理解し始めました。文化に国境はないのだと。僕たちは西洋 の文化を自分たちの生活様式に取り入れる一方で、アフリカ大陸に根ざすルー ツを否定していたために混乱していたのです。
僕は文化遺産の分野で調査を続けるため、2019 年にはスペインのカナリア 諸島に行き、文化遺産の利用と管理について修士課程で学び始めました。そ こでついに分かったのです。あの問いへの答えは一人ひとりのなかにあるもので、どんな個人に対しても、文化を強要することはできないのだと。 僕は今、共著者たちと『Rediscovering the Cultural Heritage of João Afonso』という処女作を書いています。僕の村、João Afonso の文化遺産に関する史料を集めた本で、この本を村の図書館や学校で読んでもらえるよう にしようと目指しています。僕は、教育こそが子どもたちや若者を僕たちの 文化に結びつける架け橋になると信じているのです。