モルディブは、エメラルドに輝く海に囲まれた群島の国です。毎年多く のモルディブの若者が良い雇用や教育、医療を求めて故郷の島から首都マレに旅立ちます。美しい海はすべての旅の始まりと終わりを象徴するかのようですが、若者の多くは故郷のコミュニティ、伝統、価値観からの断絶 いかりを経験し、疎外感を抱いています。ときには自らを支える錨が失われたかのように感じることもあります。 元々モルディブには非常に調和の取れた社会があり、島々には多様な文化がありました。凶作による食糧不足といった問題はあるものの、島の コミュニティの結びつきは緊密で、家族間での分かち合いが当たり前の社 会でした。しかし、国による首都を中心とした開発政策のため、50年前 から多くの若者がマレに移り住み、故郷の島のコミュニティから切り離さ れてきました。若者たちは下宿先の家で家事労働を強いられることは珍し くなく、ひどい場合は虐待を受けることもあります。そして、そこにつけ 込むように組織犯罪や暴力的過激主義もはびこっています。一方で、地 方の島々では高齢者と子どもばかりが残り、頭脳と力が失われつつあります。
私の母も出産をして、体の弱かった生まれたばかりの私を育てるために、 自分の島を離れた若者の 1 人でした。マレの良質な医療がなければ、今の 私は存在していなかったでしょう。若者たちが尊厳ある生活を送り、国 民の団結と平和を通じて国の調和と伝統を復活させるにはどうすればい いのか?
これは私にとって身近な問題でした。この問題に取り組もうと、若者が 主導するさまざまな組織で働き始め、特に若者たちの社会参加について 尽力してきました。今は国際青年会議所(JCI)モルディブ支部の評議会 議長として、開発助成金プログラムや青少年育成のための資源投入を監 督しています。自分たちの要求や意見を政府の決定のために提案する力が、 若者には必要です。
美しいエメラルドの海は私たちと世界をつなげています。地球市民で ある私は、若者の社会参加は世界中のどこでも実現しなければいけないことだと信じています。自分の国から始め、良い例を世界に示していきたい。 私は、モルディブで、そして世界中で、若者たちが社会の一員として受け入れられ、彼らの声が響き、彼らの価値、創意工夫、尊厳が尊重される、 そんな未来を夢見ています。