5 歳の子どもと言えば、お人形遊びやかくれんぼに夢中な年頃でしょう。 では、私はどうだったか? 世界を変えることを夢見ていました。それどこ ろか「世界を変えた女性」の 1 人になろうと思っていたのです。そう、ダイ アナ妃のように。「世界を変えた女性」という T V 番組に出てくるダイアナ妃を、母がいつも憧れのまなざしで見ていたからです。
母がダイアナ妃の人生が特集された雑誌を持っていたこともよく覚えてい ます。もちろん私は幼かったので、そこに何が書いてあるのか分かりません でしたが、ダイアナ妃がアフリカ人グループと会談している写真に目を奪わ れました。白人女性が「黒人」たちと和やかに話している姿を見て何だか気 になった私が、写真の背景にあるストーリーを母に尋ねると、ダイアナ妃が宝石のようにいかに貴重な人であるかを話してくれました。
そして、貧しい人々を助けようとするダイアナ妃の情熱が私の情熱になりました。23 歳のとき、政治の世界に入り、モーリシャスの野党に所属して、 貧富の格差やジェンダーの不平等に反対する運動を開始しました。しかし政 界では、若い女性議員はそれだけで男性議員から差別を受けました。政治家でいるには、腐敗した体制の一部になり、自分の価値観を裏切らなければな らないということを知りました。私のやりたいことはこれだったの?
かつてダイアナ妃が「王妃になるのではなく、みんなの心の王妃になりた い」と述べていたように、自分が政治家になることを夢見るより、より良い 世界を夢見ることの方がはるかに大切なんだと悟りました。そうして、 2020年の初めに政治活動を辞めました。私の直近のプロジェクトは、若い アフリカ人が自分たちの経験を記録、共有し、アフリカでより良いネットワー クを推進する方法を学べる、オンライン・シンクタンクをつくることです。
なぜ、めいっぱい働いても少ない収入しか得られないという社会に慣れて しまっているのでしょうか? なぜ銀行の CEOと同じように清掃員に敬意を 払うことができないのでしょうか? なぜ万人がありのまま平等に尊重されないのでしょうか? 私は「実力主義」の世界を夢見ています。そこでは、 社会正義が広く行き渡り、誰もがハッピーで、貧しくて学校に通えない子どもたちもおらず、女性たちは関心があることを声に出すことができます。 「アフリカ人、黒人は動物同然だ!」という固定観念に終止符を打ちたい。
そうして、より良いアフリカになる手助けをしたい。腐敗した独裁者、栄養 失調、非識字、貧困……こういうものだけでアフリカが満たされているわけ ではありません。同じ「母なる大地」の上で暮らす私たちはみな、互いに公 平であるべきです。社会正義が何にも勝る世界を自分たちの手でつくる。それが私の夢です。