すべての夢想家に捧げる夢

ブータン王国は、人口約70万人のヒマラヤの小国です。先代の第4代国王は、父王の予期せぬ崩御により、17 歳の若さで黄金の玉座に就かれ ました。若き王は、国民の運命は自分の決断にかかっており、間違いは 許されないことをご理解されていました。そのため若き王は、国の成功は国民の幸福によって計られると考え、国民総幸福量(GNH)を提唱し、政策に反映する決心をされました。第 5 代国王は、父のこの崇高なビジョ ンを受け継ぎ、今日、博愛の心をもってブータンを導かれています。

世界のために人々が抱く夢全部に勝るような、たった一つの夢を言葉 にするのは難しいですね。普遍的な平和と調和、万人のための教育、貧 困の撲滅、環境保護……どれも立派な夢ですが、私には一つひとつの夢よりもっと大きな夢があるのではと思っています。それと言うのも、私た ちの国王は戴冠式のとき、国民にこう語りかけました。「王として、私は 自らの夢を持たない」と。国王に許されるたった一つの夢、それは国民 の夢全部だというわけです。だから私も国王にならって、私の夢をすべて の夢想家のために捧げたいと思います。

現在、私は、Drukyul’s Literature Festivalのプロデューサーを務めてい ます。この文学祭は 10 年前から開催されている読者と作家のグローバル なコミュニティであり、さまざまなアイデアが集まる空間です。パトロン にして著名な作家でもあるアシ・ドルジ・ワンモ・ワンチュク王太后陛下 の高貴な志から生まれ、世界中の偉大な作家や思想家が物語を祝いました。

毎年 400 ~ 500 人以上が訪れ、世界中の 10 万人以上の人々がソーシャル メディアで参加しています。私の仕事は、世界中の人たちが夢をシェアできる場をつくるお手伝いをすることなのです。 仏教には、徳のあることをした後、その徳を衆生のために捧げるという修行があります。他人の幸せのために自分の徳のほとんど全部を寄付す るという実践は、おそらく仏教で最高の美徳でしょう。そして、私のお気 に入りのお祈りは、「おお菩ぼ 薩さつよ、慈悲の貴重な宝石よ。あなたの誕生を 祈ります。他人の幸せのために生まれ続けますように。そして、あなた の博愛の行いがあまねく広がりますように」菩薩とは、簡単に言えば「慈悲深い人」。すべての夢想家のなかに菩薩がいると、私は信じています。

そして、私の夢は、世界中の夢想家が抱くすべての夢が燎原の火のように広がること、世界全体に平和、愛、調和、人類がみな家族になるような 夢が伝わっていくことです。

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