僕はスリランカで生まれ育ちました。いつでも戦争の悲劇と隣り合わ せにあった国です。僕の父は軍人だったので、父を失うかもしれないとい う可能性が、子どもの頃の僕の心のなかには常にありました。戦争へ行く 父を見送るときはいつも、もう二度と会えないかもしれないという恐怖 が胸を締めつけました。しかし、戦争の影響を受ける北部州と東部州に住む人々は、はるかに大きな恐怖と苦しみのなかにいました。 1983年に始まった内戦は、2009年に終結しました。
それから2年後、僕はかつて戦場となったヴァヴニヤという町で働いていました。政府に よる更生と和解を進める仕事に、更生委員会事務局のインターンとして携 わったのです。元反政府勢力の人々と交流し、彼らの更生と社会復帰の 手助けをしました。戦争の被害を直接受けた人たちの現実を、自分は同 じ国で生活してきたのに全く理解していなかったことを思い知らされまし た。なにしろ反政府勢力だった人たちのなかには、僕と同年代の人もいたのですから。自分と同じ国の同じ年齢の人が、自分とはまったく異なる 凄惨な現実を生きていた。その事実に打ちのめされました。
このときの経験は、私たちが分かち合う共通点に比べれば、社会格差や 民族の違いなどはるかに小さいことも教えてくれました。ならば、なぜ 違いばかりを追い求め、戦争が発生してきたのでしょうか?
内戦の背景は複雑です。私はあまり一般化することを好みませんが、そ こには三つの要因があったと考えています。社会に存在する不平等、自 律的な経済成長の機会の少なさ、そして最も大事なのが思いやりに基づ いた教育の欠如です。質の高い教育を受けられなかったこと、それは人々が共感力を失ったことを意味していました。社会に存在する不平等は、 私腹を肥やそうとする人にたやすく利用されてしまい、経済的苦境のな かで人々は、容易に自分とは異なる人間への暴力へと駆り立てられていっ たのです。
だからこそ、思いやりの心と平和を育むための基盤が必要なのです。そ れが教育です。普遍的な共感力を積極的に教える、質の高い教育プログラ ムを実施する。そうすれば、人々は違いではなくお互いの共通点を追求す るようになるでしょう。こうした思いやる力を備えた市民が不平等を減らし、平等な経済機会の創出に努めていくはずです。僕たちのなかにある共 通点を見つけ出し、それを育てていくと同時に、僕たちの持っている違 いをも大切にする社会。それを実現するのが僕の夢です。誰もが幸せで平和にいられる世界を一緒につくっていきましょう!