私は、セントルシアというカリブ海に浮かぶ島の田舎にある農村出身 です。私の村には他の地方でも見られる典型的な特徴があります。かつ て農業によって中流層が繁栄していましたが、観光業に焦点が当てられ るようになると、やがて貧困、失業、暴力、犯罪がしまったのです。島 の 80%以上が農村で構成されていますが、こうした地域は極めて困窮し ており、貧富の差が顕著です。こうした影響は、シングルマザーの世帯 ではなおさら強く感じられます。
私が生き延びるために、両親や祖父母が犠牲になるしかありませんで した。一緒に育った他の子たちとは違って、私を島で最高の学校に通わ せてくれたのです。しかし、高校に入学してから、セントルシアには生活スタイルという点でものすごく大きな違いが存在することに気づきま した。農村部から来た私と裕福な地域から来た子どもとでは、見てきた 現実が全く違ったのです。私の村では、水がないときにはくみに行って 水浴びしたり、親の農作業を手伝ったりするのが普通です。でも、裕福な地域の子どもたちは、そんな経験とは無縁でした。 私はいつも二つの世界の真ん中にいました。一つは、自分が十分だと全く感じられない世界でしたが、もう一つの世界では、他の人よりもた くさんのものを私は持っていました。そんなことが頭にあったから、自 分のコミュニティでも成功できる人がいること、他の人も同じことができるように私が扉を開けることを証明したいと思いました。
その第一歩は、25 歳で国連に参加したこと。まず 2015 年にインターンとして参加し、その年末にはプログラム・アシスタントとして専任の ポストを得て、その後さまざまな立場でキャリアを積みました。でも、国連では母国の向上に直接貢献できていないことに歯がゆさを感じるよ うになりました。私はどちらかというと草の根的な人間なんだと気づいたんです。
そこで農村の、特に女性の経済的向上を第一の目的とするNPOを設立しようと決意しました。Helen’s Daughtersと名づけたこの組織では、 農村の女性たちにサステナブルな農業のやり方を教え、Google Maps などのツールを用いて、作物の栽培に最適な地域を決定するといったデ ジタル農業の手段を紹介しています。また、ビジネス開発の様相につい て教えるだけでなく、食品小売業、法律、金融、観光の各分野の専門家とつながれる支援ネットワークもつくっています。農村部の女性農家や ブリティッシュコロンビア大学工学部の学生と私たちは連携して現実の農業問題に技術的なソリューションを用いて対処しています。
私の夢は、まずセントルシアの農村を変革すること。カリブ地域の経済を誰も取り残さない、サステナブルでインクルーシブなものに変え、 農村をその要にしたいのです。