マルタのなかでもゴゾ島は保守的だ。そんな島で初めて、私は自身がゲ イだと公然とカミングアウトした者である。17 歳のときだった。カトリッ クの国で若くしてカミングアウトすることは社会的にも、宗教的にも苦痛が伴う。最もつらかったのは、母に告げたときだ。「気は確かなの? そ んなことよそで言っちゃだめよ」「私たちが何とかするわ」などなど、反応はさまざまなものだった。
私には参考にできる人がいなくて、自分で自分を支えねばならず、セクシュアリティをアイデンティティとする活動家になるにはどうしたらいい のかを考えなければならなかった。そんななか、2014 年、マルタでは同 性婚が認められるようになった。それを祝うマルタ本島の人々の模様を 寝室のテレビで見かけたが、ゴゾには祝う人などいない。私のまわりに は喜びを分かち合える人はおらず、私は自分が何者であるかさえ祝うこと ができなかった。こんな状況を変えたいという想いから、翌年に L G B T I の啓発団体 LGBTI+ Gozoを結成した。私の努力が評価され、2017 年に は Queens Young Leaders Award を受賞した。この賞は私のものであると 同時に、ゴゾのすべての LGBTI のためのものでもある。疎外され、自 分たちの懸念を声に出す場所を持たないすべての人たち、声が届かないと感じている私たちのための賞だ。
自分の考えが過去の世代のものを反映しているにすぎないと気づいたのは、この賞を受賞し、初めて異なる文化や考え方に触れたときだった。 イスラム教徒やカトリック教徒、無神論者、そして魂の答えを見つけよう と悪戦苦闘する私、といったさまざまな信仰を持つメンバーで夕食をともにした。それは、私の人生でこれほど平和を感じたことはないというほど 幸せなひとときとなった。友人たちと心から正直に話をして、経験を共 有し、教え学び合い、互いをサポートすることを喜んだ。そう、すべて が喜びだった!
この日以来、私は決して諦めないことにした。もし誰かが私のセクシュ アリティを受け入れてくれなかったら、一緒に座って、その人が何を信じ ているのかオープンに話し合いたい。異なる国籍のさまざまなアーティストの絵が同じギャラリーで公開されるように、異なる信念を持った個人一 人ひとりが生きていくことができる、お互いを支え合い、見返りを期待せ ずに助け合うことができる世界が私の夢だ。