私はエスワティニの田舎で育ちました。そこでの生活は農耕が基本で、
特にトウモロコシの栽培をよりどころとして生計を維持していました。 かんがい 灌漑システムは手に入らず、豊作のためには特定の季節に降る雨に頼るしかない状態でした。2012 年には、私の国に最長記録となる乾季が訪れま した。干ばつにより、農作物の生産量はみるみる悪化し、私たちがそれま で行ってきた伝統的な農法では気候変動が引き起こす変化に追いつけず、将来にわたって持続的に食料を生産する能力が損なわれてしまったのです。 世界中の多くの人々が同じような経験をしています。気候変動が農産物 の生産に影響を及ぼしたことで慢性的な飢餓や栄養失調を引き起こしてい ます。その事実にとても心が痛み、「栄養価が高く、環境に優しく、手の 届く価格の食料を、すべての人が手に取ることができる。」そんな世界を 私は夢見るようになりました。その世界では、農家は栄養価の高い食料の 生産量を増やしつつも、農業活動によるエコロジカル・フットプリント※ 5を減らしています。そして農業部門でグリーン・ジョブを生み出し、 長期的な経済成長で貧困を緩和していることでしょう。さらに、食品を生 産する過程で必要なエネルギーを減らすことで、過剰な食品廃棄物を防ぐ のに役立つでしょう。
このような世界こそが、私が Phalala Youth Empowerment for Food Security という団体とともにつくり出そうとしている世界です。この世界 を実現させるためには、サステナブルな食料、農業、天然資源のために政 策研究やアドボカシー※ 7 を行います。同時に、社会正義に則って、さま ざまな立場の人々の意見を取り入れたサステナブルな食料生産システムの構築が必要です。 私はまた、新しいタイプの若き食の実践者、特に女性を育成し、農業経
済に参入していくために必要なツールや資源を提供しなければならないと 考えています。地方の農家の多くは女性であるのにもかかわらず、資金調 達や市場での立場などにおいて「女性であること」が不利になっているからです。
言うまでもないことかもしれませんが、これらの活動は、私たちだけで はできません。資金や専門知識、ノウハウを提供してくれる人たちとパー
トナーとなることで、目指す世界をつくることができるのです。地球上の 誰もが人間としての尊厳を持ちながら、心も体も満たされる食料を手にすまいしん ることができる世界を。この夢へ向かって邁進することが、私のライフワークとなっています。