法 の 力 で 自 由 に

2001年、マケドニア紛争が起こりました。私はまだ 3 歳でしたが、街 が火に包まれた恐ろしい光景を覚えています。それから 11 年間、政権を 握る政党を批判しようとする人はいませんでした。人々は厳しく罰せら れることを恐れていたからです。その結果、犯罪と汚職がはびこり、力 を持つ政治家たちは国民のお金で私腹を肥やしました。

しかし、一番若い世代の私たちが、教育改革を求めて抗議活動を始めた ことがありました。高校生や大学生、やがては国民の半数が参加し、 2 0 1 6 年に政府を転覆させるまでに至ったのです。人々は自分たちの持つ 反感を政府の建物にカラフルなペンキを投げつけることで表したので、「カラフル・レボリューション」と呼ばれました。 政権交代後、腐敗した政権のメンバー全員が法の裁きを受けるものと誰もが考えていました。ところが、裁判にかけられたのはほんの一部の 人間だけ。元大統領は実刑判決を受けた後、ハンガリーのブダペストへ 保護を求めて、逃げてしまいました。国民は、特に裁判官たちに強い怒りを抱いています。自分たちの責務を果たさず、恐喝や脅迫に屈して、最 大の政治的犯罪者を釈放したからです。

私は今、スコピエにいて、法学部で学んでいます。そして、いつの日 かこの国を法と正義の世界的なモデルにする裁判官の 1 人となることを夢 見ています。誰もがルールを遵守し、破った者は罰せられる。そんな当 たり前のことが実現すれば、この小さな国においても多民族が協調して 暮らせるようになっているでしょう。それは私の究極の夢でもあります。

腐敗した裁判官で汚された正義の顔をきれいにし、法廷への信頼を回 復し、犯罪者を脅かす存在になる。ゴールまでの道のりは、長く厳しいものです。しかし私はいつでも、「自分だけでなく、この国と国民のために、 その道を進む価値があるのだ」と言います。私は、図らずもオーストラリ アの市民権も持っていますが、もし私がこの国を去ってしまったら、一体誰が、誰のためにこの状況を変えるというのでしょう? ここが私の国 であり、私はこの国を去るつもりはありません。私は、法律の勉強に全力 を注ぎます。いつか裁判官のガウンを着られるかもしれません。世界中の すべての若者たちと、これからやって来る新しい世代の人たちには強い意志を持ち、法の力を信じることを勧めたい。なぜなら、私たち北マケド ニアの若者たちは紙とペンだけで革命を起こし、政権を倒したからです。

最後に、キケロの言葉を引用します。 「法の奴隷となることで、我々は自由になることができる」

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