ぼくたちの戦いは続く

もし彼らがストレートだったら、こんな無残な死を遂げていたのかな? 悲しいことだけど、これが現実なんだ。

南アフリカは、LGBTIQ+ の権利を含めて、人間としての尊厳を擁護・ 保障する強い憲法を持つ国と、世界からは見なされている。でも、初め に書いた通り、これは必ずしもそうじゃない。そもそも固有の権利だって 言うなら、何でいまだに権利を主張しなければいけないの? もちろん、 LGBTIQ+ の人々に対する人権意識は労働権も含めて間違いなく進歩してきた。でも、ぼくたちはまだ戦い続けている。必ず勝ち取らなければい けない。ジェンダーの平等を。

法的な保護が整っているところでさえ、現実はなかなか変わらない。 LGBTIQ+ のコミュニティは、職場でも社会でもたくさんの差別に耐え ている。都市部はおおむね寛容だけど、タウンシップではゲイのコミュニ ティに対する残忍な殺人や人権侵害が多発している。それは本当に悲しい ことだ。タウンシップで生まれ育ったゲイのぼくも長い間、差別を恐れる あまり自分自身のコミュニティのために声を上げることができないでい た。ぼくたちのほとんどが自分のセクシュアリティを隠したり、寛容な職場環境を持つ分野に自然と引き寄せられる。 でも、ぼくが求めているのは「寛容」じゃない。「受容」だ。例えば、隣の人が何か言ったりしたりするのを気にすることなく、ぼくは同性の パートナーと手をつないで歩きたい。僕はそういう考え方がもっともっと たくさんの国々に広まり、高い次元で LGBTIQ+ の権利が守られる世界 を実現させたい。性的指向やジェンダーに関係なく人間の生命を尊重し、 祝福する国。すべての人が差別を受けることなく暮らし、その恩恵にあ ずかることのできるアフリカ。それがぼくの夢だ。

ぼくたちは今、価値が相対化された時代に生きている。この時代は、 若いレズビアンのミリセント・ガイカは、2013年に殴打されレイプさ ぼくたちの固有の価値観や信念についての哲学的イデオロギーの違いが、れた。犯人の男たちは、彼女が「男性ではない」ことを証明したいと考え たんだ。リンド・セレは、天使のような素晴らしい歌声を持つとても若く て有望なアーティストだった。だが、ある朝、ダーバンのウムラジというタウンシップで何度も刺された。街の人々はただ見ているだけだった。

憲法に謳われている価値観や目的と矛盾しがちだ。だからこそ、ぼくは 人間の尊厳を守るということについての教育と意識を社会の隅々まで行き渡らせ、社会に変革を引き起こしていきたい。 ぼくの夢はまだ終わらないんだ。

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