知識がチャンスの扉を開く

マ・ダは、ベトナム最大の都市ホーチミンから約 75 km 離れた、絵のよ うに美しく小さなコミュニティです。私が初めて訪れたのは 2015 年のこ とでした。とても驚きました。水力発電ダムのすぐそばなのに、人々は電気のない暮らしをしていたからです。住民の多くはいまだに貧困ライン を下回り、識字率も低い状態です。乏しいインフラに伴う課題に加えて、彼らの考え方が発展の最大の妨げとなっています。マ・ダでは、教育は 不要という考えが一般的です。読み書きができれば十分と思い込み、ほと んどの住民が小学校を卒業しただけ、なかにはそのレベルに達していない 人もいます。若者たちは学歴がなくても工場で働けるため、多くが義務 教育を終えるモチベーションを失っています。

私は、持続可能な開発のためには地元の人々が大きな役割を担うと信 じています。教育は考え方や行動に影響を及ぼす重要な要素です。例えば マ・ダでは農業による淡水や地下水の汚染が深刻な問題となっていますが、 もし農民たちが農薬の使用を抑えるしかるべき理由に気づけなければ、生態系を傷つけ続けるでしょう。また現在、マ・ダの子どもたちは親と同 じように農業か漁業または工場の仕事を選びます。しかし、もし彼らが学 校に行き、英語や他のスキルを身につけたら、教師やエンジニア、医師 など、もっと多くの進路が開けるでしょう。私は、教育の必要性を人々に分かってもらいたいのです。

私は今、Scivi Travel という教育ツアーを企画する旅行会社で働いており、Ma Da Learning Hub の建設に携わっています。この教育施設は 2 0 2 2 年にオープン予定で、読書の習慣を促し、地域の若者の知識とキャリア の可能性を広げることを目指しています。図書館や学習スペースなどの 屋内施設に加え、遊び場や庭園では STEM※ 9 などの教育活動を行います。

さらに、ボランティアたちによる農業やキャリア、ライフスキルについて の無料ワークショップも開催します。ここでは地域の子どもたちが新しい 知識やモチベーションを得るだけでなく、運営するボランティアも子ど もたちから好奇心や思いやり、礼儀正しさなど多くを学べます。お互いに 学び合う。それが人々を絶えずマ・ダに惹きつけ、コミュニティを助けることになると思います。 マ・ダだけでなく世界中の子どもたちにとって、知識こそがチャンスの扉を開いてくれると信じています。若い世代が知識を身につけ、地域や 世界の課題に関心を向け、貧困や汚染、気候変動などに力を合わせて立ち向かうことを夢見ています。

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