私が大事に向き合ってきたある取り組みについて共有させてください。それは、インドネシア人が本当に重要な問題について繋がって話し合うプラットフォーム、BRANIの構築です。このプラットフォームはインドネシア語の「berani(意味:勇気)」という言葉と、国のモットーである「多様性の中の統一」から着想を得ています。これらは、インドネシアの多様な文化の交わりや、違いを超えて互いを受け入れ、助け合っていくことへの責任を表しています。
幼い頃から、私はいつも友達が仲間として受け入れられていると感じているかということを気にかけるようにしてきました。しかし、留学を終えてインドネシアに戻ると、まだまだしなくてはいけないことがあると感じさせられる出来事がありました。それは、ある時、私の友人らが自身が体験した辛い経験について話してくれたからでした。特に、性に関する暴力についての話です。
多くの女友達が、婚姻関係にない相手からの虐待について相談することを恥ずかしいと感じており、そのため被害を受けても報告できないでいることを知り、胸が痛みました。また、男友達は、男性は性的虐待の被害者になり得ないと言われ、理解を得られそうにないと葛藤している人もいました。LGBTQ+コミュニティの友人たちからは、さらに心が張り裂けそうになるような話を多く聞きました。それは、屈辱的な差別など、これまで語られてこなかった密かな苦しみでした。自身の家族を含め、周囲からの暴言に耐えている人も多くいました。また、支援を受けられないかもしれないということではなく、性別や性的指向を明かすことで非難されることを恐れ、助けを求めることができず、ひっそりと虐待関係に苦しんでいる人もいました。
ある友人は、出会い系アプリで自分を騙した人物から、性的指向を家族に暴露すると脅迫されたという恐ろしい体験を打ち明けてくれました。彼は「親に知られたら勘当されるかもしれないから言えない」と話していました。これらの話を聞く中で、私たちの社会には表に出されてこなかった、深く隠された痛みが存在することに気づかされました。これらを知り、私は怒りと苛立ち、そして悲しみが入り混じった複雑な感情に襲われました。なぜ、このような問題についてもっと語られないのでしょうか?なぜ男性や多様なアイデンティティを持つ人々が、自分の声を上げることをためらってしまうのでしょうか?私たちには、この現状を変える必要があるのは明白です。この問題から目を背けるのではなく、より多くの人々が理解し、支え合うことが重要だと思いました。
だからこそ私は、人々が情報を共有し、意識を高め、自由に質問できる安全で受け入れられるバーチャルな空間、BRANIを作りたいと思ったのです。また、すでにオープンマインドな人たちだけに語りかけていては、真の変化を生み出せないとも感じました。このプラットフォームは、ジェンダーやセクシュアリティについて既に理解している人々だけのためのものではなく、これまであまり考える機会がなかったり、違和感を持っている人々にも開かれたものです。私は、すべての人に関心を持ってもらい、「ジェンダーの多様性とは何か?」「性的指向とは何か?」といった質問をしてほしいと思っています。これらの問いかけこそが、より思いやりのある社会を築くための第一歩になるのです。
このプラットフォームを通じて、私たちが多様性を受け入れ、困難な問題について語り合い、より包括的で理解あるインドネシアを作り、誰も孤独に苦しむことなく、すべての声に耳を傾けることができるようになることを願っています。