地球を一つの「学校」にすること。世界の人々がお互いに学び合える 場をつくることが、僕の夢だ。
日本の田舎で生まれ育ち、子どもの頃から世界に対して何ができるのか を自分に問い、悩み続けてきた。大学生になってから、発展途上国を中心 にいろいろな国を訪れた。実際に行ってみると、それまでテレビなどから
抱いていた印象と全く違う景色にいつも愕が く 然ぜ ん としていた。世界について 何も知らない僕に、一体何ができるのか? 悩みはさらに深くなるととも に、現地に行って初めて分かるということの大切さにも気づいていった。
まだぼんやりしていた世界の解像度を一気に鮮明にしてくれたのが、 2014年の One Young World サミット。190カ国以上の人々が一つのホー
ルに集まる景色は、まるで「小さな地球」。全世界を丸ごと旅したような 気持ちになった。それだけに、この「地球サイズの経験」をなかなか消 化しきれずにいた。なかでも、大きな衝撃を受けたのは、北朝鮮代表の パク・ヨンミさんのスピーチだ。過酷すぎる境遇を経験してもなお、彼 女は家族との食事の温かさを語り、僕らと同じことに幸せを感じていた。
僕らは国籍や人種、民族などさまざまな境界線に隔てられた他人では ない。同じことを喜び悲しむ仲間なのだ。そして、一人ひとりの人生の 物語を学ぶことで、それを強く実感できる。学び合いから始まり、受け 入れ合うことで、僕らは応援し合い、幸せを分かち合い、ともに平和をつ
くって生きることができるのだと気づかせてもらった。世界に何ができる かを問い続けた日々に、「学び合いの場から平和を実現したい!」という 僕の夢への道が見つかった。そしてこの本を、その場づくりの最初の一冊、 最初の一歩にする。
そんな想いは、インターネットを通じて瞬く間に世界の隅々まで広まっ た。当初は友人の応募から始まったが、各国代表者が SNS で呼びかけて くれたり、各国のメディアでも紹介されたり、このプロジェクトがなけれ
ば出会わなかった人たちも応募をしてくれた。自分は掲載されなくても、 このプロジェクトを気に入ったからと拡散してくれる人がいたのも忘れられない。 世界中にコロナウイルスが蔓延し、つらいニュースであふれる一方で、
僕のパソコンには日々夢が寄せられていた。原稿の募集要項の最後に書 いた言葉があった。「何が起きても夢を描き続けよう。」公開したときに「願 い」として書いたこの言葉は、世界から夢が集まるにつれて一つの真実に なっていったと思う。ロックダウンのさなか家から書いてくれた人、街 で紛争が起きるなかで書いてくれた人、本当にいろんな状況から夢の原稿 が集まった。何が起きても人は夢を描き続けることができる。そんなピュ アな真実がパンデミックによって、逆に照らされたように感じた。
一つひとつの物語もそうだ。苦難や失敗、葛藤、深い悩み、人生で何が 起きても希望を捨てず、プロジェクトや運動、起業、日常の行動など、 等身大で課題に取り組んでいた。そこには、自分と誰かを同時に幸せに
しようとする夢と生き方があった。夢を描くことで、生きがいも未来の景 色も見えてくる。そんな夢を持つ意味を改めて世界の人々から教わって いった。
201カ国が集まった末に感じるのは、この本は人類の希望そのものだと いうこと。誰かが苦しむ hopeless な状況をどうにか hopeful に変えたいと いう夢が記されている。誰も本当は争いたくないし、傷つきたくない。心 の奥の夢では必ず誰かが笑顔だ。夢を持つことの意味は、きっとそんな 未来への希望を周囲に、次世代に受け継いでいくことなんだと思うよう になった。
僕らの国籍はばらばらだけど、夢に向かう情熱は世界共通。この本は 201カ国の仲間が集う「小さな地球」であり、「夢」という共通言語で記 された、世界と人を学ぶ「新しい教科書」に育てたい。人から人へ学び合 いの輪をどんどん広げていって、いつか一つの学校のように丸ごと平和
な地球を世界の人々とつくっていきたい!