幸せの自給自足

私は、隆起した環礁でできたニウエ島出身の父ビル・ファカフィ・モト フウと、美しい砂浜のクック諸島出身の母ロウル・イナマタの間に生まれ、 二つの伝統を受け継いでいます。私は“Inangaro”と名づけられました。クッ ク諸島のマオリの言葉で「愛」という意味です。


私はマタラウで生まれ育ちました。ニウエ島にある活気に満ちた歴史を持つ村です。ニウエの人口は 1,600 人ちょっとですが、私たちの村の人口 は 100人以下。私たちのコミュニティで最も重要なのは、みんなの幸福、 社会のつながりに対する理解、そして信仰と、文化的、伝統的価値観をしっ かりと守ることです。芸術、歴史、言語、文化、そして物語に対する私の 愛情はこのコミュニティで培われたものです。私たちは自給自足的な農 業で生計を立てていることで知られています。兄弟や妹、私にとっての 最初の「教室」は、プランテーションでした。私たちはそこで、人生にお いて大きな価値のあるもの、つまり、家族、勤勉さ、目的を持って結束すること、種を蒔ま いたものを収穫することなどを学んだのです。 ニウエで育った私は子どもの頃、世界を旅することを夢見ていました。

大人になるにつれて、さまざまな仕事やボランティア活動で、ニュージー ランド、オーストラリア、ハワイ、日本、アメリカ、韓国、トルコ、ノル ウェーなど、いろいろな国に行く機会に恵まれました。しかし、これらの経験は、私の世界に対する見方を変えてしまったのです。

小さなコミュニティで生まれ育つと、みんな一生懸命働かなければなり ません。自然との調和と環境を大切にしていますが、なぜならそうすることが土着の文化のなかに根づいているからです。しかし、私が先進国で見 たものは、国民の幸福よりもむしろ経済的収益に焦点を当てたシステムで した。ホームレス、飢餓、人種差別など、貧富の差をたくさん目の当たり にしました。また、政府によって資源を強制的に奪われたことで、土着の コミュニティの糧は損なわれ、お金持ちはよりお金持ちに、貧しい人たち はより貧しくなると感じました。国の財政上の幸福にとって、経済が重要 であることは私も理解しています。しかし、コミュニティを発展させ、構 幸せの自給自足 築する人々が必要なのです。社会的責任と、社会的正義が重要なのです。 こうした経験を通じて、私は島のシンプルな生き方の本当の価値が分か り、より大きな規模で自分の置かれている立場と自分に貢献できることを理解できるようになりました。私にとって、繁栄とは富の蓄積だったり、 ただ日々を生きることではありません。他の人々の人生に触れ、彼らを豊 かにする方法を見つけることなのです。

ジャーナリスト、ラジオ・プロデューサー、そして多岐にわたるネットワークや組織の代表者としての経験を利用して、私は現在、太平洋諸島の 人々に、自分たちの話をシェアし、私たちの歪められた歴史を書き直し、 文化とアイデンティティを再生する機会を提供しています。有史以来ずっ と、植民地主義が世界各地で土着の人々に徹底的な影響を与えてきたからです。

私の理想の未来は、人々が平和と調和のなかで生活し、自分たちの言語 と文化を自由に使える世界。そして、土着の知識が認められ、尊重される世界です。私の夢が実現するには、私たちの価値観の転換、つまり、より サステナブルな教育システムが必要であり、私たちの環境を完全な状態で維持しなくてはいけません。可能な限りの知識を集めたいと私は思います。 そうすれば、私が島に戻り、祖先たちがしたように土地を耕すとき、より 良い未来をつくることができます。私たちは、先祖から土地を継承し、未来の世代からそれらを借りているのだから。

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