私は幸運にも、ラロトンガという太平洋の島に生まれました。クック諸島を構成する15の島々のなかでは最大の規模を誇ります。ラロトンガ島は人口 1 万 7000 人ととても少なく、面積はフロリダのディズニーワー ルドの半分ほどですが、クック諸島の全領域の 99.9%以上は海で、その広さは 200 万 km2 にも上ります。
もちろん、私には子どもの頃の海の思い出がたくさんあります。サンゴ 礁の海でシュノーケリングをして人懐っこい魚たちを見つけたり、恐ろし い海の生き物から逃れようと死に物狂いで泳いだり、カヤックで波に乗っ たり、カメと一緒に潜ったり、クジラが海中からジャンプするのを眺めた り、おばあちゃんと一緒に海藻を集めたり、おじさんたちが岩礁の縁でブ ダイやタコを捕まえるのを見たり……他にももっとあります。海は、見え る範囲をはるかに越えて広がる、無限の資源のようでした。クック諸島の人々、そして他の誰にとっても、海は永遠にそこにあり、恵みを与えてく れるものだと私は思っていたのです。
しかし大人になるにつれ、そうではないかもしれないと知りました。私 たちが二酸化炭素を過剰に排出し、いかに地球を窒息させているか、熱 帯雨林の大半をいかに焼き尽くしてきたか、海水温の上昇がいかにサン ゴの白化を世界中で引き起こし、海の生態系を破壊しているかを知りました。
私の少ない経験のなかでも、島の海洋生物の変化に気づき始めました。 ラロトンガ島のまわりにはまだ美しいラグーンがありますが、今では死ん だサンゴや海藻が、私が記憶するどのときよりも多く浮いているように見えます。自然は永遠に続くわけではなく、当たり前のものだと思って はいけないと、今は分かります。海のような大いなるものが、人間の手 によって危険にさらされうると想像しにくいですが、それが事実です。
私は現在、エンジニアとして働いています。実際に問題を解決したい からです。気候変動の解決策は、多くの人が望むほど簡単ではありませ んが、大規模な再生可能エネルギーのような現実的な方法で、その影響を 遅らせることができると信じています。今後、私は島の美しい自然を守 れる環境に優しい解決策、例えば太陽エネルギーや海の水質保全、排水 処理などに力を注いでいきたいと思っています。
私の夢は、いつか子ども達や孫たちにも、海がもたらすあらゆる命や美しさを享受してもらいたいということ。私たちが、大勢の「島民たち」が暮らす一つの世界として、ともに協力し合うことを夢見ています。私 たちをつなぐ海を何世代にもわたって守るために。