私が当選するとは、彼らは思ってもみなかったのでしょう。21 歳で初 めて選挙運動をしたとき、人々は私が抱く期待を抑えようとし続けました。
「最下位になっても、戸惑うことはないよ」と、私の背中を軽く叩きなが ら上から目線で言ってきたものでした。あるいは、「そんな大きなプレッ シャーに本当に耐えられる?」と言って、暗に諦めた方が良いと促してきたのです。今ではルクセンブルクの最年少政治家の 1 人になりましたが、 この経験を通じて私は国の発展のために若者がリーダーになることの重要性を確信しました。 でもここで話したいのは、そもそもなぜ私のような若い女性が政治にかかわっているのかという話なのです。私は政治への関心から道を選んだ わけではありません。政治家になる前から、私は活動家でした。そして、 自分が経験してきた差別について話をすればするほど、ますます多くの 女性たちが自分も同じような経験をしたと打ち明けてくれたのです。私 たちは男性でないために過小評価され、白人でないために差別を受けてい ます。私たちの人生経験は信用されず、耳を傾けてさえもらえないのです。
性別や肌の色、階級に関係なく、すべての人に自分の能力を発揮する チャンスが与えられる世界を、私は夢見ています。そして、あらゆる夢に は始まりが必要ですから、私は古くからの教え「今でなければいつ?
私たちでなければ誰がやる?」に応えました。2020年の国際女性デーに We Belong Europe を共同設立したのです。この組織は、個人の経験を 広めることから変化は始まるという考えに基づいています。私たちは有 色人種の人々が安心して集まれる場所をつくり、経験を共有し、アイデン ティティを探求し、自分の人生の物語を発展させています。
We Belong ではさらに、白人が大多数を占める場から有色人種の人々 を追いやる、暗黙の偏見にも異議を唱えています。例えば「どこの出身で すか? いえ、本当はどこの出身かと聞いているのです」といった質問は、 有色人種の人々に大きな負担を与えます。グローバル化した世界で、な ぜいまだに国籍を特定の肌の色と結びつけて考えるのか、理解できません。
誰かのアイデンティティに疑問を抱くことは、その人がその場所の一員 だと感じている意識に異議を唱えることで、その人の自由や人生の決断 に悪影響を及ぼします。
私たちの世代のうちに、進歩は可能だと証明したいと思っています。そ して誰もが、自分が本来持っている能力と同じくらい限りないチャンスを持っていると気づいてもらいたいのです。