飛翔する翼

ロサンゼルス空港よりも小さい領土の国、ツバルで私は生まれ育ちまし た。他では見られないさまざまな価値を持った唯一無二の特別な場所です。 国連の基準では貧しいとされる国ですが、そこで育った私たちはもっと何かが必要だと感じたことはありません。けれど、小さな島で育つ難しさ を挙げるとすれば、それは、適切な仕事に就くチャンスが少ないことです。

成長するなかで、私はいつも鳥に魅了されていました。ツバルにはたく さん鳥がいて、実際ペットとして飼っていたからでしょう。私の鳥が何日 も海に出かけたり、近くの島の友達を訪ねたりしても、いつも迷わず家に戻ってくるのは驚きでした。子どもの頃の私の夢は、良い教育を受けて

仕事を見つけ、その職を通じて世界を旅し、さまざまな国に住み、それ でも戻りたいときにツバルに戻ってくる、ということでした。そう、まさ に鳥のように。幸運にもアメリカで勉強する機会に恵まれ、大学卒業後 は世界有数の投資銀行に就職しました。こうした経験のおかげで、経済 的な自由を得るだけでなく、若い専門家として成長もできるような適切な仕事に就く重要性に目が開かれたのです。 私は今アメリカに住んでいますが、私の夢は変わらず、ツバルに戻り、

母国に貢献することです。1人でも多くのツバル人が質の高い教育を受け、 適切な仕事のチャンスを得られるよう手助けしていきたいのです。ツバ ルでは、勉強する機会には事欠きません。毎年大勢がフィジーやオーストラリア、ニュージーランド、その他の国々の大学を卒業しています。足り ないのは、適切な仕事に就く機会なのです。政府は島の最大の雇用主です が、それでは十分ではなく、多くの若者が海外へ仕事を求めています。 質の高い教育と適切な仕事の機会はどちらも等しく重要です。この二つ がそろえば、人々を貧困から救うことができ、強固な家庭を築き、やがて 強い地域社会や国につながっていくでしょう。

ですから私は、若者たちが大学卒業後に海外で適切な仕事に就けるよう、 この難しい世界をどう切り抜ければよいかコンサルティングしています。

若者たちに、海外の仕事を通じてできるだけ多くを学び、ツバルをより 良くするために戻ってきてほしい。彼らの知識や経験を、ツバルの発展 のために生かしてほしい。私の夢は、もっと多くのツバルの若者たちが、 自分の翼で飛翔できるようになることです。鳥のように。

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