恐 れることなく生きる

10 代の頃、同世代の多くの女の子がそうであるように、ボディイメージ と自己肯定の問題に苦しみました。自分の見た目が大嫌いで、体重や体型 に関して自意識過剰になっていたのです。極端な食事制限とエクササイズ を続け、一時は体重が 37kg にまでなっていました。社会が課した美の基準に従おうとするあまり、命を失いかけたのです。

それが変わったのは、護身術を教えるシンガポール随一の学校、Kapap Academy に通い始めてからのこと。そこで、DVや性暴力、いじめなどの 被害をかつて受けた女性や子どもたちに出会ったのです。そして、恐ろし い体験談を聞くうちに、私は考えるようになりました。こうした女性や子どもたちが精神的な回復力と護身術を身につければ、二度と恐怖や痛みの なかで暮らすことはないでしょう。彼女たちに勇気を与えるお手伝いがで きれば、私の人生はもっと意義のあるものになるだろうと。そして、それ が夢となりました。

夢を実現するために、自分探しの旅をしてきました。うまくいかないこ とはたくさんありました。まず家族や友人たちは、私が護身術のインスト ラクターという仕事を選んだこと、男社会のなかで女性が働くことに協力的ではありませんでした。それから、男性の生徒たちに対しては、彼らを 指導するだけのスキルが自分にないといけませんでした。こうしたさまざ まな困難に向き合ううちに、疑ったり批判したりする人に立ち向かい、自 分の能力を証明できる強い性格を持っていることに気づいたのは、自分で も驚きでした。しかし、このような困難に挑戦するには、まず、その時点 での自分の限界を受け入れなければなりませんでした。自分の恐れや限界に臆せず立ち向かうことで、人はそれを越えていくのです。 やがて私は、社会事業として Kapap Academy の運営にかかわることに なりました。これまで 10 年足らずの間に、仲間とともにシンガポール、マ レーシア、インドなどで 6 万人以上の生徒たちとトレーニングをしてきま した。私たちの活動が認められ、2017 年、シンガポール人として唯一の Queens Young Leaders Award を受賞しました。さらに今は取り組みを推し進め、年齢や性別にかかわらず、安全でいられるように設計されたパー ソナルセーフティアプリ Angel Wings の開発も進めています。

さまよいながら人生を送っていた私は、10 年の間に生きがいを持つ人間 となりました。社会が自分をどう見ているかということではなく、人として、 武道家として、社会活動家として、自分自身を鍛える覚悟があれば、他の 人たちの人生にたくさんの変化をもたらすことができるのです。そして、今、これまでの道のりで出会った大勢の仲間とともに夢を追い続けています。

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