私はアフリカの弱い立場にある人々に医療サービスを提供することに 情熱を注いでいます。
私が育ったのは、ナイジェリアの環境破壊が最も進んだスラム街の一 つでした。この街は産油地域にあり、流れ出た原油で農地は汚染されてい ました。雨季になると、濁流が大西洋から堤防を越えてあふれ出し、原油流出の産物や廃棄物が混ざった水が、家のなかまで流れ込んできます。 この水を飲んだり、触れたり、原油の成分を吸い込んだりすることは、呼 吸器感染症、心臓や肺の病気、子どもの命にかかわる病気、精神疾患、下痢、目の痛み、肌のかゆみなどにつながります。
幼い頃から兄や姉とともにスラムの問題を改善する活動に参加していた私は、自分たちが住む地域には十分な医療が提供されていないと感じ、 みんなの健康を守りたいと強く思うようになりました。その想いは私を 突き動かす力になりましたが、学業を続けるのは大変でした。スラム街 にある小学校には、椅子や机がありません。みんな床に座って勉強しなけ ればなりませんでした。中学校は、家族が何とか学費を工面してくれた おかげで、市外の私立校に進むことができました。大学でもまた経済的 に苦労しましたが、家族の支援と奨学金のおかげで卒業し、ようやく正 看護師になることができました。
大学を卒業した翌年、360degreeHEALTH NETworkを設立しまし た。十分な医療サービスを受けていない弱者のために、健康に関する意 識向上キャンペーンや予防接種、健康診断、医薬品の配布などを行って います。設立から4年間で、8つの州、58のコミュニティをめぐり、およそ 2 万 2000 人にサービスを提供してきました。 私には、2030年までにサハラ以南のアフリカのコミュニティのためにより健康的な未来を確保するという夢があります。そのため、国際機関や 政府と連携しながら資金を調達し、医療従事者を対象とした教育研究機 関を設立しようと計画中です。また、政治や文化の違いにかかわらず医 療を提供できる環境を整備することで、できる限り多くの弱者を支援し ていきたいと考えています。私の夢が完全に達成されれば、1 億人以上の 生活をより良いものに変えることができるでしょう。