子どもの頃の私はいつも幸せでした。人を笑顔にすること以上に私を輝 かせるものはありませんでした。4 人きょうだいで 3 世帯が一つ屋根の下 で暮らしていたから、退屈とは無縁の毎日。暇なときは外で過ごしていま した。木々や花に囲まれ、「カモミールは口のなかの火傷に効く」「新鮮な茶葉は血を止める」といった自然の治癒力の素晴らしさに魅了されました。
学校では大変でした。そこで私が目撃したのは万物と自我の衝突、誰も 私に警告してくれなかった暗黙のルールと適応しなければならないたくさ んの枠組み。不健全な競争と永遠の比較がありました。「成功する」(いま だにこの言葉の意味は分かりません)ためには、自分自身を完全に上書き する必要がありました。だから、自分らしさを否定し、みなが進む方向を 追うようになりました。先生や両親、仲間が喜ぶことをしようと自分に言 い聞かせたのです。でもこのときの私は、幼い頃のようには笑っていませんでした。明るい性格で知られていた少女が、輝きを失い始めたのです。 私は薬学を勉強しました。歯肉炎を抑えるカモミールに含まれているも のは何なのか、知りたいと思ったからです。病気に打ち勝つために必要な ものはすべて手に入れた、そんな自信を持って薬剤師としてのキャリアをスタートさせました。しかしすぐに、もう一 つの大事な教訓を学びます。 どれだけ多くの医学的な情報を患者さんに伝えたとしても、たいていの場 合、それは必要とされてないということです。本当に必要とされているの は、話を聞いてくれる人、心と頭、魂を込めて耳を傾けてくれる人です。
私が働いていた薬局には、大勢の患者さんが相談にやってきました。な かには、何も買わずに、すっきりした気持ちで満足して帰っていく人もい ました。ある年配の女性は、「毎週薬局に来ることは、処方箋のない治療のようなもの。それこそ私が望んでいるものなの」と話してくれました。 薬にできることは限られていますが、心を開けばより良い世界をつくるこ とができます。誰かの胸の重荷が振り払われるのを見ると、私のなかに輝きがまた灯り始めるのです。 私の使命は、誰もが想い想いに人生の目標を追求できるように、みんなを幸せで健康な状態へと導くことです。自然のなかで美しく生きる木々や 花のように一人ひとりが自分らしく輝けて、自分なりの方法で世界に貢献 できる。私たちが貢献できることはたくさんある。自分の人生の目標が他 の人よりも価値がないなどと考える人は 1 人もいない。そんな世界を、私は夢見ています。