「私の原動力になっているのは、何よりもまず娘の存在です。彼女にとって、誇れるような存在になりたいんです。」
今回のインタビューでは、彼女のドリームストーリー『若い母親たちに力を』の公開から時間を経て、マパセカさんの人生がその後どのように進んできたのか、改めてお話を伺いました!
(『若い母親たちに力を』をまだ読んでいない方は、こちらから!→ [LINK])
こんにちは!私は今回インタビューを担当するカレンです。再びこうしてWorld Roadのコミュニティとつながってくださって、本当にありがとうございます。またお会いできて嬉しいです!
はじめまして、Mapaseka Maphama(マパセカ・マファマ)です。私はレソトという、南部アフリカにある南アフリカ共和国に囲まれた小さな内陸国の出身です。現在はインドに住んでいて、昨年から修士課程に通っています。
わあ、すごいですね!最初に記事を公開したときから、きっといろいろな変化があったんでしょうね。お話を伺うのがとても楽しみです!
過去を振り返って
まず最初に、あなたの最初の記事が公開された頃は2020年でしたよね?その頃の生活について聞かせてください。どんな日々を過ごしていたんですか?また、どんなことに取り組んでいたんでしょう?
はい、あの時期のことはよく覚えています。実はちょうど無職の時期でした。2016年から2017年まではプロジェクトベースの契約で働いていたんですが、それが終わったあとは長期的な仕事が見つかっていませんでした。
そうだったんですね…。安定がない中での生活は、きっととても大変だったのではないでしょうか。
ええ、本当に大変でした。でも私はずっと、「たとえ仕事をしていなくても、成長を止めてはいけない」と思っています。その期間も、自分を高めるために動き続けようと意識していました。たとえばワークショップやソフトスキルトレーニング、学びのあるプログラムなどに参加して、自分の成長につなげていました。
その姿勢、本当に素晴らしいですね。落ち込みがちな時期を、自分を伸ばすチャンスに変えていたんですね。
そうなんです。ただじっと「仕事が来るのを待つ」だけではなくて、その間にも得られるものが欲しかったのです。だから、どんな「空白の時間」でも、寝て過ごすのではなく、何かを学べる時間にしたいと思っていました。
それに、その頃からネットワーキングにも力を入れ始めて、そこで国際的なプラットフォームやチャンスを知るようになったんです。たまたま誰かに「このプログラム知ってる?」と聞かれたり、SNSで偶然見つけたりして。最終的に、今の機会もそうやってたどり着いたものなんです。

そうやって常にアンテナを張っているからこそ、次のステップに進めたんですね。ちなみに、その当時のご自身のメンタルの部分での変化はどのような変化がありましたか?
正直に言うと、精神的にはあまりいい状態ではありませんでした。仕事がない状態って、本当に大変ですから。ただ、私の場合は実家の家族のサポートが大きかったです。おかげで自由に動けて、いろいろなプログラムにも参加することができました。それがあったからこそ、前向きでいられたんだと思います。
以前、「レソトの若い母親たちや女性を支援する取り組みを立ち上げたい」というお話をされていましたが、その原点はどこにあるんでしょうか?
実はちょうどその頃、地域のボランティア活動に関わっていました。そのなかで、レソトには若い母親のための支援施設があることを知ったんです。そうした場所で、若い女性たちが力をつけていく様子を見て、すごく心を動かされました。
でも、その思いの根っこはもっと前にあって…。私自身が21歳のとき、シングルマザーになった経験が大きいですね。大学在学中で、確か2年生か3年生の頃でした。本当に大変な時期で――若くして母親になることって、想像以上に複雑なんです。感情面も、心理面も、身体的にも、経済的にも…あらゆる方向から支援が必要になる。そこで、改めて「若い母親には本当に多くの支援が必要なんだ」と気づかされました。
その状況で勉強も続けていたなんて…本当に大変な経験だったと思います。でも、それがあるからこそ、若い母親たちへの理解がとても深いんですね。
そうですね。それに、さらに深い部分では、家族の影響もあります。本にも少し書いたのですが、私の両親は20年近く結婚していたものの、ずっと関係が良くなかったんです。最終的には離婚して、母が一人で私と弟を育てました。母は感情をあまり表に出す世代の人ではなかったけれど、それでも、どれほど大変だったかは私にも伝わってきていました。
娘として、そして母としての両方の立場から経験してきたことが、今の活動に強く結びついているんですね。
はい、本当にそう思います。時間が経つほどに、思いはどんどん強くなっていきました。そして気づいたんです、「これは個人の問題ではなく、根深い社会的な問題なんだ」と。心理学では “世代間のトラウマ(generational trauma)” と呼ばれるもので、変えなければ何度でも繰り返されてしまう。だからこそ、私はそこに立ち向かいたいと思ったんです。若い母親たちを支えることが、自分の使命だと感じています。
現在の歩み
過去のお話を聞かせてくれて、本当にありがとうございました。
前回、夢を語ってくれたあのときから、マパセカさんの人生にはどんな変化があったんでしょうか?近況をぜひ聞かせてください!
私にとって大きな変化の一つは、心理学の修士課程に進学したことです。これまでの経験を通して気づいたのは、「誰かを本当に支えたいと思うなら、まず“どう支えるか”を学ぶ必要がある」ということでした。私自身、若くして母親になったからこそ、「あのときこんなサポートがあれば、どれだけ助けられただろう」と思う場面がたくさんありました。そうした思いが、心理学を本格的に学ぼうと決意した最初のきっかけになったんです。
もちろん、若くして母親になった人たちにとって、収入を得る手段を身につけることもとても大切です。特に、学校を中退せざるを得なかった人たちにとっては。でも、私が強く感じたのは「心のケア」が必要だということ。彼女たちは深いトラウマを抱えている場合も多くて、その影響が子育てにも出てしまう。だからこそ、まずは心の部分から立て直さないと、負の連鎖が続いてしまう。本当の意味で人生を立て直すためには、まずそこから始めるべきだと感じたんです。
それは、マパセカさん自身の経験とも深くつながっているんですね。実際にその痛みを知っている人だからこそ、届けられる言葉や支援があるんだと思います。
まさにそうなんです。私はずっと「すべては心から始まる」と信じています。考え方が行動をつくって、その行動が人生の流れを決めていく。だから、自分の内側で何が起きているのかを理解することが本当に大切なんです。
母国を離れてインドで博士課程に進むというのは、娘と離れて暮らすという意味でもあり、簡単な決断ではありませんでした。でも、心理学を学ぶ中で、たとえば性格の傾向を見極める方法や、心の異常に気づく力、そしてカウンセリングのスキルなど、人を本質的に支えるための具体的なツールが少しずつ身についてきたと感じています。

それは、今後のキャリアにも、支援する女性たちへの向き合い方にも、すごく活きてきそうですね。ちなみに今、レソトの若いお母さんや女性たちが直面している一番大きな課題って、どんなことだと思いますか?
やっぱり一番は「貧困」ですね。
貧困は、教育の機会や若年妊娠といった他の問題とも深くつながっています。私自身、今回インドでの修士課程に奨学金をもらって来られたんですけど、それでも費用のかなりの部分は自分で負担しないといけません。本当に大変ですし、ほとんどの若者にはそんな余裕はない。結局、貧困が最大の壁になっているんです。
それだけ根深い問題だと、心の健康にもすごく影響しそうですね。
はい、メンタルヘルスの問題も本当に深刻です。
専門家に相談したくても、そもそも身近にいないし、仮にいたとしても「その費用をどうやって払うのか」という問題が出てくる。さらに、心のケアが受けられる場所ってほとんど都市部だけなので、地方や農村に住む人たちにはそもそも選択肢がないんです。 支援が本当に必要な人たちのもとへ届いていないのが現実です。
貧困とメンタルヘルスがいかに複雑に絡み合っているか、よく伝わってきます…。
To be continued…