ERG(従業員リソースグループ)のススメ ~「想い」を組織の力に変える~

今回はOne Young Worldダブリンサミット日本代表アンバサダー 藤原 さんから寄稿いただきました

WorldRoadコラムは、グローバル・ローカル、様々なプロジェクトをする中で閃いたトピックを深掘りし、調査や公開情報、データ、事例などをまとめています

各業界で、従業員リソースグループ(ERG)の設立や活動強化が進んでいる。ERGとは、Employee Resource Groupの略である。通常の業務とは別に、従業員が自ら手を挙げ、関心のあるテーマについて部門や職位を超えて取り組むボトムアップ型社内コミュニティだ。ジェンダー平等、障害者インクルージョン、LGBTQ+、育児や介護、サステナビリティなどテーマは多岐にわたるがDE&Iに関するテーマが多いことが顕著だ。

学生時代には、関心のあるテーマや社会課題について、ゼミやサークル、ボランティアなどを通じて自然に関わる機会があったのではないだろうか。例えば、自分自身は大学4年間を過ごした東ロンドンルイシャム区の難民支援教室(Action for Refugees in Lewisham)で活動していた。一方、社会人になると日々の業務に追われ、そうした「関心を軸にした活動」は後回しになりがちだ。会社の中でより良い社会にしていくために自分がもっとできると考えるアクションはあるか?問いかけてみてほしい。 ERGはその空白を埋め、社員一人ひとりの問題意識や当事者性を、組織の中で生かすための受け皿となる。ERGを社会人の課外活動と捉えて、増やしていくことはできないか。課外活動と捉えたことが組織や社会の中で本業として、主軸になる可能性も秘めているのだ。

実際、マッキンゼーの調査では、フォーチュン500企業の約9割がERGを導入しており、効果的に運営されているERGは、従業員の包摂感やエンゲージメントを高めるとされる。特に「自分の声が組織に届いている」と感じられることが、離職防止や生産性向上につながる点は見逃せない。

[出典:mckinsey.com

https://www.mckinsey.com/capabilities/people-and-organizational-performance/our-insights/effective-employee-resource-groups-are-key-to-inclusion-at-work-heres-how-to-get-them-right]

先進企業では、ERGが事業にも影響を与えている。例えばMicrosoftやSalesforceでは、障害者インクルージョンをテーマとしたERGから製品やサービスのアクセシビリティ改善に向けた当事者視点の意見が挙がり、実際の機能強化や新たな支援体制の構築につながっている。またEYでは、社員ネットワークを起点とした取り組みが全社的なデジタルアクセシビリティ方針の策定や業務プロセスの見直しに発展した。サステナビリティ分野でも、環境や社会課題に関心を持つERGによって社内施策や地域連携プロジェクトが立ち上がった事例が報告されている。

[出典: Emploer Assistance and Resource Network on Disability

https://askearn.org/employerprofile/ey-embedding-accessibility-throughout-the-enterprise ]

ERGによる社内、社外いずれもの成功事例として、SOMPOグループが推進してきた多様な人権課題・社会課題への取組みが挙げられる。LGBTQ+に関する取組みをはじめ、環境・社会貢献活動である「SOMPOちきゅう倶楽部」、地域と共につくる「SOMPO流 子ども食堂」、障害のある社員が活躍する特例子会社SOMPOチャレンジドなど、地域も巻き込んだ活動が行われている。また、セクシュアルマイノリティである社員、精神障害や身体障害のある社員、ALLYを表明する社員など、さまざまな背景を持つ社員一人ひとりが、それぞれの立場で活躍している。損保ジャパンのERG活動のひとつである「LGBT-Ally」サークルから派生し、社員主体の活動が組織や地域にもポジティブな影響をもたらしていることが伺える。

[出典: 損保ジャパン 東京レインボープライドに関するリリースhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000387.000078307.html]

重要なのは、ERGを単なる「福利厚生」や「有志活動」で終わらせないこと。ERGの目的を明確にし、経営戦略やDE&I方針と接続させ、一定のリソースと経営層の関与を確保することが成功の鍵となり得る。例えば、自分とは異なる属性に関するERGへ参加する場面を想像してほしい。子育て世代のグループや、障害者雇用に関するグループなど、必ずしも自分自身には当てはまらない属性のコミュニティと交流し、ワークショップ等を通じて具体的な悩みや課題、その解決策を共に考える機会を設けるとする。このような活動に参加することで、単に知識を得るにとどまらず、他者の置かれた状況を自分事として捉え、社会人として物事を多角的に見る姿勢が培われていく。さらに、その経験は多様な顧客ニーズや価値観への理解を深め、新たな市場のペルソナを発見・創出する視点へとつながる可能性も秘めている。つまり、ERGは従業員のエンゲージメント向上に寄与するだけでなく、組織の意思決定の質や、中長期的な事業成長を支える人材基盤を育む戦略的な装置となり得るのである。

サステナビリティや社会課題への関心が高い若手・ミドル層にとって、ERGは「声を上げる場」であると同時に、「経営視点を学ぶ場」でもある。自分の問題意識を起点に、組織や社会をどう変えていくのか。ERGは、その実践の第一歩となる存在だ。自分は起業家でも活動家でもなく、会社員。それでも、次世代リーダー向けのサミットOne Young Worldに参加した日本代表の仲間であり世界のリーダーの夢を紡ぐ活動を続けているTaichi(市川太一)さんから、「本当は誰もが変化を起こせるアントレプレナーだよ(会社所属であればイントレプレナーとも言う)」といつも背中を押されている。

まずは、自分が社会に属する一人の人間として、何に関心を持っているのかに思いを巡らせることから始めたい。そして、その関心を今の職場や身近なコミュニティの中で、どのように形にできそうか?、同じ思いを持った人は周りにいるか?、考えてみてほしい。学生時代に部活やサークル選びを楽しんだときのような、少し肩の力を抜いた感覚から社内外でチャットグループを作って初めの一歩を踏み出してみるのもいい。関心があるテーマの切り口が浮かばなければ、アイディアと仲間探しのために、気になるイベントに参加してみることからでもいい。

2026年3月6日に国際女性デーを祝って開催された、イタリアミモザデーウォークイベント。
駐日イタリア大使館前から東京タワーをめがけて行進。女性だけでなく男性の参加者も多く、行進しながらイタリアと日本のジェンダーギャップ事情や本音を語り合った。
企業のERGと社会的なムーブメントの両軸で昇華されていることが顕著なプライドパレード。

[出典: Tokyo Pride HP: https://pride.tokyo/parade/ ]

大学時代から社会人になった今も変わらず世界に触れられるホームであり、同志が集う部活的な存在、One Young World Japanコミュニティーにて。U18の学生が社会課題解決をテーマに発表するOYWJ Student Pitch 2022の候補者(団体名: 点字塾BRAILLIE)のメンターとして共に課題に向き合った。

[One Yound World Japan Student Pitch 2022実施概要: https://oywj.org/news/2022/08/oywj-student-pitch/]

関心のある者同士が集まる小さな対話から、外部講師を招いたラウンドテーブル、社外での社会活動、社内活性化につながるメンターシップ、啓蒙活動、さらにはプロダクトデザインに直結する事業部門との連携へと、活動の輪は少しずつ広げることができる。そうした地道な種まきの積み重ねが、やがて組織や事業、そして社会にとって意味のある成果として花開くことは夢ではない。

寄稿 One Young World 2014年 ダブリンサミット 日本代表アンバサダー 藤原 星菜


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