未来の薬をすべての人に

医学研究の分野で働こうと決めたのは、まだ子どものときでした。その頃、 不治の病でいかに多くの人が若くして亡くなっているかを知ったのです。こ の状況にゾッとしました。けれど誰もが、何でもないことのように振る舞っ

ていました。「どうしようもないことだ」「人生はそういうもの」、最悪なの は「全世界は救えないから、現実を受け入れた方がいい。」これらは医学研究を学んでいた 12 年間に聞き慣れてしまった言葉です。私はどうにかして、

彼らの言うことを気にしないようにしました。諦めて目標のない人生を送る より、より良い世界のために働きたかったのです。

そしてある日、たどり着きました! 私の研究チームが、患者の免疫シス テムを使って不治のがんを治療する新しい方法を見つけたのです。2 019年に 公表されたこの情報は世間を騒がせましたが、免疫学者である私たちが気づ いたことを、本当の意味で理解する人はいませんでした。免疫システムをが んに適用できるなら、どんな病気にも使えるのです。この発見のおかげで、

私の頭はさまざまなチャンスでいっぱいになり、さらに続けていきたいと思 いました。

スイスでは、どんなレベルであれ、市民が政治や社会生活に参加すること が不可欠だと考えられています。私は 24 歳で地方議会議員に当選して以来、 健康問題に取り組んできました。みんなが願うように、私も薬の価格がもっと安くなるよう心から願っていますが、選挙のおかげで、それに具体的に取 り組む機会を得られたのです。さらに赤十字社にも加わりました。

しかし、新型コロナウイルスが私たちの生活に困難をもたらしました。免 疫学の医師として、パンデミックに関する医療や政治の決定に直接かかわり ましたが、ここで私は、国々が恐怖に震えているときに、国際組織がいかに 無力であるかを痛感したのです。政府が空港でマスクや物資を独り占めしたり、契約書を書き換えたり、サプライチェーンを分断したりするのを目の当 たりにしました。がっかりした一方で、もっとうまくやれると私は知ってい ます。私は、未来の薬を発明し、誰もがどこでもその薬を確実に得られるよ う闘う科学者世代の一員です。今も各地で子どもたちを死に至らしめている 病が、もうじきなくなる世界を夢見ています。世界規模の予防接種プログラ ムや、必須医薬品が安く手に入ること、そして、より強力な医療インフラが 整えば、多くの人々の生活を変えられると確信しています。

各国が武器よりも健康にお金をかける未来を、私は進んで信じます。争う のではなく、ともに取り組むことを。傷を生み出すのではなく、傷を癒すこ とを。私に共感してくれますか?

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