ニュージーランドに生まれ育った僕は、自然に囲まれて大きくなりまし た。子ども時代の大好きな思い出は、青い湖で泳いだり、山で雪だるまを つくったり、緑の丘を自転車で走ったりしたことです。この清らかで美し いニュージーランドこそ、僕らが世界に伝えているイメージですが……こ れは真実の片面にすぎません。
湖で泳いだことを思い返すと、釣り好きだった父のことも思い出されま す。見事な太った魚を釣ったときは、いつも自慢していました。しかし年 を追うごとに、父は魚が小さくなっていることに気付き、やがて、もう釣っ ても仕方がないとやめてしまいました。
これは母なる自然を酷使してきた小さな影響にすぎず、もっとひどい影 響が他にもたくさんあります。僕ら人間は、都市や農地を広げるために 貴重な生息地を破壊しています。化学物質を流し、土壌や川を汚染しています。さらに、持続不可能なほど大量に化石燃料を燃やして気候変動を引 き起こしています。僕らは、母なる自然からあまりにも多くを奪い、母な る自然を病気にしているのです。このままでは自然が回復できなくなるま で病気が進み、次の世代は僕が育ったような美しい世界を体験できなく なってしまいます。
ニュージーランドの先住民マオリ族は、地、空、海の守護者である Kaitiaki という概念を理解していました。僕らはこの考えに立ち返り、 地球を傷つける今のあり方を変えないといけません。個人の行動と、もっと大きな政府の介入との二つのレベルで、変化が必要です。僕は、自分が 地球に与える影響を最小限にするため、植物由来の食事をしたり、リサイ クルをしたり、水の使用量やプラスチックごみを減らしたりして、がんばっています。そして、このような考えをまわりの人に伝え、行動を促してい ます。また、コンサルティングの仕事を通じて、国の環境・エネルギー政 策に影響を与え、より大きなスケールでの変化を推進したいという情熱を持って働いています。
僕が夢見るのは、僕たち人間が自然と調和して暮らす世界です。何を行うときにも、サステナビリティを常に意識し、自然を回復させようと心が ける世界です。誰もが地球の守護者としての役割に気付き始めるよう願っ ています。僕は子どもたちに、同じ青い湖で泳いだり、同じように雪だる まをつくったり、同じ緑の丘を自転車で走ったりしてほしいのです。みんなで力を合わせて、何としても実現させましょう。