小さくても一歩ずつ

1 6 歳 の 頃 の 忘 れ ら れ な い 記 憶 が あ る 。あ る 日 、家 族 と と も に 自 動 車 に 乗 っ て街に出かけたときのことだ。子どもの手を握りながら通りを歩き、物乞 いをする 1 人の母親の姿が目に飛び込んできた。彼女の服はぼろぼろで、

子どもは服を着てさえいなかった(ここはラオスの首都だったのに)。疑 問がいくつも頭に浮かんだ。ぼくは、打ちひしがれ落ち込んだまま帰宅した。だが同時に貧困を撲滅し、若者をエンパワーして夢を生きられるよう にする方法を見つけ出そうという固い決心が生まれていた。

それから数年後、ぼくはラオス代表として Global Shapers サミットに 参加した。想像してみてほしい。それぞれのコミュニティに変化を起こそ うと注目すべきプロジェクトを推進している、世界中から集まった素晴ら しい若者たちでいっぱいの会場のなかにいることを。その瞬間から、若者 の力を信じるぼくの心はより一層情熱を燃え上がらせることになった。若者であるぼくたちには、世界をより良い場所にする力があるんだ!

ぼくはラオス全土の若者たちを鼓舞し、エンパワーするためのプロジェ クトを、Global Shapersの仲間たちとともに実行に移すようになった。過去には困難もあった。ぼくたちの若さゆえに真意や実行力を疑われたりす ることが多かった。それでもプロジェクトの結果を一つずつ出していくことで、信頼を勝ち取ることができた。

ぼくたちは、若者が夢を実現するモチベーションを高められるよう、ラオス初の TEDx を開催した。また、子どもたちが英語を学べるように、 シンガポールで入手した 3,500 冊の英語の本を国立図書館に寄付。そして UNICEF との協力のもと、ラオスの若者たちの声を集め、彼らが自分たち の国にどんな夢を持っているのかを知るプロジェクトを実施した。集まった夢はラオスの首相に読まれることとなり、政府が若者のために新しい政 策を立案する上での貴重な資料となったのである。ぼくたちは、大きな夢への小さな一歩を踏み出したのだと思う。今後は 起業家として雇用を創出すると同時に、若者が将来役に立つスキルを身に つけられるように支援していきたいと考えている。ぼくは、民間の基金で 数百万ドルを調達し、そのお金を使ってラオスの中小企業や起業家の成長 を促したい。貧困を撲滅し、若者が夢を実現できる未来を実現させるため に 、

ぼくたちはこれからも若者を支援していくつもりだ。「やろうと決めさえすれば、なんでもできるのです。」17 歳のグレタ・トゥーンベリさんが、 英国議会で立派な聴衆の前でこう話したこの言葉が、ぼくたちの心のなかで鳴り響き、背中を押してくれています。

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