僕がイギリスに住むようになったのは 12 歳のときだ。それまではずっ とアジアで暮らしてきた。生まれたのはベトナムのサイゴン。生まれてか ら 10 日 後、黄おう疸だんを発症した僕は、現地の病院ですぐに適切な治療を受け ることができなかった。体の運動を担う脳の一部を損傷し、僕は車いすで生活することになった。
人は見た目に惑わされるとみんなが言うけど、それは本当だと僕は思う。 僕のことを見た人は、僕の体がおかしいから頭もそうなんだろうと考え るんだ。だけど、僕は読み書きもできるし、まわりでどんなことが起こっ ているかだって分かっている。それに、障がいのある人だって、自分の考えをみんなに伝えることができるんだよ。 そのことを実感した瞬間があった。僕はダブリンで開かれた One Young World サミットで、社会企業家のキャロライン・ケイシー氏のプ レゼンテーションを見て、すごく感動したんだ。視覚障がいがある彼女は、 自らの経験を語った後、会場を真っ暗にして5人のゲストスピーカーを紹介した。彼らの姿は見えず、声が聞こえるだけ。「普通の人」のように聞こえたけれど、会場が明るくなったとき、彼らの身体には障がいがあ ることが分かった。彼らはみんな、困難を乗り越え、人生を自分で切り拓 いていた。隠れようとなんてしない。みんなの前で堂々と話していた。
僕も車いすを使う人のために声を上げようと決意した。 それから僕は毎年 One Young World サミットに参加し、自分の話をするようになった。バンコクのサミットでは、車いすを使う子どもたちは、 同年代の他の子どもたちと違うわけではなく、共通点がたくさんあるこ とを説明しようとした。僕たちがいないふりをして目をそらすのではなく、僕たちを見てほしい。「こんにちは! 見ているよ」と声をかけてほしい。 そう訴えた。スピーチの後、何十人も僕のところにやって来た。姪やおば さん、近所に住む子ども、友達のおじいちゃんに、どのように話したらい いのか、初めて分かったと言ってくれた。これほど多くの人たちが車いす を使っている人を知っているのか! 僕は驚いた。そして、もっと何かし たいと思った。現在、僕は黄疸を撲滅するプロジェクトに取り組んでいる。
僕の究極の夢は、障がい者が「普通の人」として接してもらえる社会 をつくることだ。できることとできないことがあるからといって、まるで 赤ちゃんか変人かのように扱わないでほしい。僕の外見が変なふうに見えたとしても、僕の内側は「人間」なんだから。