ハイチを変える先駆者になる

大学時代の親友の 1 人はかつて私に、「肌の色が違うから、君はハイチ の大統領にはなれない」と言った。ハイチでは、人々は時に肌の色で差別 を受ける。私のように比較的明るい肌の色の人は人口の5%以下。この国 の富の 90%を所有している層だが、私自身は、祖父母の国籍がミックスで、 つつましい家庭の出身である。しかしながら、私の両親は教育を強く信じていて、できる範囲で最高の学校に行かせてくれたし、さらに奨学金をも らってアメリカで勉強する機会も得ることができた。このことは、この世 界の素晴らしい多様性を私に知らしめてくれただけでなく、さまざまな世界が出会う環境に身を置くことができた。

大統領になれなくても、他の方法で祖国に貢献することはできる。そう思って、私は大学時代からコミュニティ・ビルダーとして活動している。 卒業後、私は世界銀行や米州開発銀行で、国家レベルの問題を分析する エコノミストとして働いた。ハイチの経済は過去 2 0 年以上にわたってマイナス成長を示しているので、常に人と人をつなげて、私が幸運にも獲得 できた知識を共有するために、自分の力を使わなければと感じている。

30歳のときにテクノロジーの持つ力を発見して、私の使命感は強くなっ た。仕事を辞め、Banj と呼ばれるソーシャル・ビジネスを始めた。起業 家が集まってビジネスを加速させる、ハイチ初のハブだ。Facebook や Google と提携し、地元と国際的な集団とをつなぐプロセスを形づくると いうエコシステム※ 3 によって、ハイチにおけるテクノロジー力と起業活動を後押ししている。

私は人と人をつなぐことで生まれる力を信じる。ネットワークをつくることで、人々の心を開き、社会を変革するパートナーシップを生み出すこ とができる。私は、ハイチのまだ開発されていない伝統的な資産にアクセ スできる人たちと、経済を変革して世界からのハイチの見方を変えることができる、エネルギッシュでクリエイティブな新世代とをつなげたい。

人々のメンタリティからインターネットへのアクセス、伝統的なインフ ラ設備(電気や道路)まで、変化はマラソンのような長い道のりだということは分かっている。しかしながら、多くのテクノロジーが世界の形を変 えてきたように、私たちはハイチにおける変化を起こす先駆者になるだろ うと確信している。もし母国で成功すれば、この冒険は世界の他の低所得 の国々でも再現できるだろう。これが私の夢であり、次世代に残したいモデルなのである。

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