ネパールは世界で最も貧しい発展途上国の一つです。人口の約 4 分の 1 が 1 日50セント以下で生活し、5 歳未満の子どもの約 36%が、主に慢性 的な飢餓が原因で発育不全に陥っています。※6 死亡率は高く、特に人里 離れた山村ではありふれた病気で命を落としています。私の母を黄お う 疸だ ん と いう治療できる病気で亡くしたことで、身をもって体験してきました。この無力感が、私を医療と福祉への道へと突き動かしました。
初めてヘルス・キャンプに取り組んだのは 2 0 0 9 年のことです。それか らネパール中をめぐり、これまで 50 以上の地域でヘルス・キャンプを実施してきました。2015年4月25日、大地震がネパールを襲いました。 山奥の村まで救助の手が届かず、私は募金を呼びかけ、ヘリコプターを 使った救援活動を組織しました。2 0 1 6 年には私の村に診療所を建てることもできました。
これによって、そこに住む人々の生活に良い変化が生まれました。それは治療可能な病気で命を落とす人が減っただけではありません。みんな が自らの健康や日常的な衛生習慣を意識するようにもなりました。困っ たとき、特に健康にかかわることで頼れる人がいるというのは、地域の人々 にとってそれこそが希望であり、毎日を幸せに送ることにもつながって いるのだと思います。
私自身がこれまで健康な生活を送り、教育を受けることができたのは、 私の師であるケンチェン・タング・リンポチェのおかげです。私が 7 歳 のとき、良い環境でたくさんのことを学べるように両親は私をカトマンズ の僧院に入れてくれました。仏教の僧侶でもあり、医療助手でもある私の人生の道は、師の教えに従うことであり、他者を助けて施しを与えようと する師のために身を尽くすことです。「あなたがどれだけのことを学んで も、どんなスキルを持っていても、それは常に他者の利益のために使われ るべきである」という師の言葉は、私の人生のマントラであり、いつも心 のなかにあります。
私の国では多くの国民が貧しい状況にありますが、治療可能な病気で 苦しんだり亡くなったりする人がいない世界になってほしい。ネパール のどこにいても誰もが基礎医療を日常的に受けられるように、私は全力で取り組んでいきます。より健康でより幸せなネパール。それが私の夢です。