その先へ目を向けて

小学生の頃、レゴやプレイモービルで遊ぶのが好きだった。そのキャラ クターたちのように、世界には多様な文化があり、人々は幸せに暮らして いる。そう思っていた。食料や水がなくて苦しんでいる人たちがいるなん て想像だにしなかった。
僕は世界で最も豊かな国の一つで育った。消費つまり「買い物」が日常的に行われ、文化の一部となっている。僕たちは先進国としての過去を忘 れてしまったようだ。中学校で自国の歴史を学んだ。僕たちが裕福になっ たのは、過去に行われたさまざまな出来事や選択によるものだったと知っ た。こうした選択のいくつかが、危険で不健全な条件で働くことを強制し た奴隷制につながっていた。森林を伐採し、自然環境を破壊したこともあっ た。過去の出来事と現在のニュースは大差ないのではないかと疑問を持ち 始めた。
2013 年、ダッカで複数の縫製工場が入った建物が崩落した。ここでつく られた服は海外で販売されていた。僕たちは工場の劣悪な状況に気づかず に、服を買っている。世界で最も弱い立場にある多くの人々が、現代的な世界で今も同じような状況で働いている。僕は、自分の日々の行動や選択 が無意識のうちに他国の出来事につながっていると気づくようになった。
僕の行動や選択が、最も脆弱な人々の健康や教育に影響を及ぼしている。 廃棄物を増やし、汚染を悪化させている。水など資源の過剰消費を引き 起こしている。僕は自分が買ったものがサステナブルでエコロジーなものかどうか、疑問に思って商品のサプライチェーンを調べ始めた。知識を 持って、最終製品だけではなく、その先にあるものにも目を向けるように したんだ。今、家族や友人、同僚にもこれをシェアし、お互いによりサステナブルな選択があるかどうかアドバイスをし合っている。 世界中の不正や貧困と闘いたいと思うならば、消費習慣を変えなければ ならないことに、みんな気づき始めている。脆弱なコミュニティに公平さ とエンパワーメントをもたらしながら命を救う、僕はそんな建築家になる と決めた。建築学生としての第一の関心は、サステナブルな原材料を選ぶこと。原材料がどこから、どのように、誰によって生産されているかなど、 慎重な調査が重要だ。環境と建築の伝統を維持するために、地元の、かつリサイクルや再利用が可能な材料を選ばなくてはならない。 より少ない資源でより多く、より良いものをつくり、サステナブルな生 き方を促進していきたい。すべての家族が尊厳を持って安全な環境で家を建てること。それが僕の夢だ。

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