自分が家と呼ぶ場所が、海に沈もうとしていたら? 多くの人は気づい ていないかもしれないけれど、今、地球という私たちの家はとても危機的 な状況にある。
私はソロモン諸島の数ある島の一つの出身だ。私は兄弟やいとこたちと 一緒に、白い砂浜で遊んで育った。海は美しく広がり、ラグーンは透き通っていた。陸と海と空と結びついた暮らしのシンプルさこそが、本来の私た ちだ。
歴史や伝統は、歌や物語、踊りを通して受け継がれてきた。子どもた ちは長老たちのまわりに集まり、島ならではの話に耳を傾けた。今はもう おとぎ話ばかりではなくなった。何年も前に流されてしまった釣り場の
話や、塩水の侵入で使えなくなってしまった古い井戸の話。他にも、高潮のときでも安全だと思われていた場所の話もしてくれたが、そこはも う存在しない。私を含め、子どもたちは「気候変動」「温室効果ガス」「海 面上昇」などという言葉は知らなかったが、自分たちの島に押し寄せている変化については知っていたのだ。 島の住民たちは食料や生計を得るため陸と海に頼り、自給自足の生活をしている。島の温室効果ガス排出量は限りなく少ない。なのに、一定のペー スでたびたび起こる海面上昇や頻発する災害によって、漁場をなくし、 安全な生活用水も土地も失いつつある。
今や温室効果ガスの影響はもう、島に留まるものではない。2 0 2 0 年 7 月、 インドのビハール州はモンスーンの豪雨による犠牲者であふれた。カリ フォルニアの山火事では、アーバインに住む 10万人が避難を求められた。 さらにポーランドとルーマニアではここ 100 年で最悪の干ばつを経験し、 チェコではここ 5 0 0 年で最悪の干ばつだという。
我々は何をすべきか。答えは明らかだ。今世紀の世界の気温上昇を 1.5°C 以下に抑えるための行動を本格化することだ。この考えは正しい。必要 なのは行動である。私たちの「家」、地球が他でもない私たち自身によって脅かされている。これ以上に恐ろしいことがあるだろうか? 健やかな暮らしを支える家がなければ、私たちの未来、そして子どもたちや孫たちの未来はどうなってしまうのか? 私は大小を問わず、すべての行動が重要であると考え、今まで以上にやる気に満ちあふれている。小さな島国の出身であることは、気候変動と の闘いで取り残されるということではない。自分の居場所があり、家と
呼べる世界を望むのは、私たちみんなの夢なのだから。