臨床的な心理療法家である私の夢は、ミクロネシアの人々が健やかな心 で暮らせる方法を見つけることです。私は、ミクロネシアからアメリカへ 移住した家族のもと、ミシガン州で育ちましたが、そこでは心の健康とい う話題が、ミクロネシアのようにタブー視されていません。おかげで、私はこの二つの文化の良いところを融合する方法を模索してきました。
ミクロネシアでは、15 歳から 30 歳までの若い男性が、世界で最も高い 割合で死亡していた時期があります。統計によると、自殺者の 50%以上 がうつ病と診断されています。ミクロネシアで自殺が顕著になったのは 1960 年代で、多くの人が自殺を「問題解決」の手段と見ていたそうです。※ 2
自殺率は 80 年代前半にピークに達し、2000 年代に入っても世界平均 より高いままでした。※ 3 さらに、自由連合盟約でアメリカへ移住したミク ロネシア人は、米国市民よりも高い割合で兵役に就き、兵役経験者の約
3 0%が心的外傷後ストレス障害に苦しんでいます。このほか、ミクロネ シアの島々は第二次世界大戦中に列強に侵略され、戦場となり、戦後は周
囲の海を核実験に使われ、そのトラウマや後遺症にも苦しんでいるのです。 多くのミクロネシア人は心の健康に伴うマイナスイメージを心配します が、セラピーは心の安定の大きな助けとなります。昔から、ミクロネシア には「話をする」伝統があり、愛する人たちとの会話で心の健康が改善し
ます。セルフケアには、星を眺めること、踊ること、美しい山道を歩くこと、 手を動かして物をつくることなども役立ちます。また具合が悪いときに
ヒーラーを訪ねるのも、私たちの伝統です。西洋文化では、総合医に加え、 さまざまな分野の専門医がいて、なかにはメンタルヘルスを専門にする人 もいますが、ヒーラーも同じです。多くのミクロネシア人が心のヒーラー を必要としているのです。このほか、独自の伝統薬も利用しています。私 たちの土着の地は、さまざまな感情を和らげる果物や植物の宝庫なのです。
私の夢は、ミクロネシアの伝統医学とアメリカの先進的な治療を融合す る方法を見つけ、ミクロネシア人たちに適切で総合的な精神保健サービス が提供されるようにすることです。この問題には、ミクロネシアでの物資不足から、アメリカでの医療不足に至るまで、さまざまな層があります。 しかし、この夢がかなえば、ミクロネシア人たちの体の健康も、教育の成果も、家族や友人との関係も向上します。心の健康は私たちの生活の根本 なのです。