サステナブルな生活を設計する

私は、トルコのすごく小さな都市ヤロヴァで育ちました。海に面した 緑豊かな丘があり、子どもの頃は自然のすぐそばで生活できるのがどれ ほど恵まれていることなのか、気づいていませんでした。

12 歳のとき、私はイスタンブールへ引っ越しました。ヨーロッパとア ジアの境い目にある大都市です。この街は文化のるつぼで、その独特の個性は歴史のなかでこの地に存在した数々の文明から生まれたものです。 現在の問題の一つを挙げるなら、都市が持つキャパシティを超えるほど 人口が多いことです。何年もの間、伝統的な建築や憩いの場所、緑地がゆっくりと消えていくのを目の当たりにしてきました。高層ビルが都市の新顔 となりました。このことは通りにさし込む日光を遮るなど、気候に深刻な影響を及ぼし、都市の文化的な個性を侵してもいるのです。

私は、サステナブルな建築を学び、自然や伝統的な建築、社会的ニーズを尊重する建物を設計しようと決意しました。勉強を進めるなか、私 は世界中を旅して、さまざまな文化やその伝統的な建築様式を観察しまし た。世界の多彩な建築は、異なる社会的行動と多様な景観の結果です。 例えば、モロッコの田舎にある家はレンガ造りで、部屋は中庭を囲むよう に配置されていますが、ネパールの伝統的な家は木造で棚田に面していま す。マルタでは古い石造りの家のおかげで夏は涼しく冬は暖かく過ごすことができ、スカンジナビアではファサードを南向きにすることで、限られ た日照時間を最大限に活用しています。

これらの場所で私が感銘を受けたのは、人々の生活が環境と完全に調和 していることです。残念なことに、今日、世界のあらゆる場所で似たり寄っ たりの建築スタイルを目にすることがますます当たり前になってきてい ます。その土地の気候や生活様式、資材などを無視したコピー & ペーストのような建物です。 建築家である私は、過去の経験そして未来のテクノロジーを生かさなければならないと考えています。グローバルな視点で考え、ローカルに 建てる。そして何よりも、まわりから孤立した都会のジャングルとしてではなく、全体として、私たちの環境の繁栄を考えなければなりません。

私の目標は、サステナブルな都市やコミュニティの創造に貢献すること であり、夢は、人間の存在が自然や生物多様性を脅かすことのない世界をつくることです。人間という種がバランスを保ちながら、私たちの生息地が生態系に溶け込んでいる世界です。現代の若者である私たちは、こ の地球の未来を担っています。私たちには、次の世代に緑の地球を残すチャ ンスがあり、最も重要なことですが、それが責任でもあるのです。

———–
書籍 WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGsはこちら

上部へスクロール