「クレージーな人々、反逆者、厄介者と呼ばれる人たち、四角い穴に丸 い杭を打ち込むように物事をまるで違う目で見る人たちに乾杯!」「自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を 変えていく。」(アップル社「Think Different」より)
話は 2008 年にさかのぼる。初代 iPhone が発売され、オーストラリア の首相が先住民に対して正式な謝罪を行った年。私はインターンシップで 軍事技術の仕事に従事した後、次のステップに進むべく、オーストラリア 空軍に入隊しようとしていた。私が司令官になれば、被害を減らすための 賢い決断ができるんじゃないかと考えてのことだった。だが、書類を書き ながら、はたと考え込んでしまった。「自分が本当に行きたい場所は戦場 なのか?」と。その代わりに私が選んだのは、自分の若い心に従うこと。 そんなわけで、しばらくの間は D J をやって楽しんだ。
やがて風力タービンのセールスエンジニアの仕事に就き、入社 3 週間で 南アフリカのヨハネスブルグへ派遣されることに。初めてオーストラリアを離れるのでワクワクしていた。しかし、そこで目の当たりにしたのは、 吹き飛んだ頭が写った血まみれの写真が載ったヨハネスブルグの新聞の 1 面、日雇いの仕事を求めて工業団地の外に並ぶ人々、タイヤを燃やして出る毒ガスにまみれて人々が食べ物を調理している街角……。突然、世界の 深い不平等と非人間性に気づき、その瞬間から私は今まで通りというわけにはいかなくなった。
ヨハネスブルグにいたとき、停電対策のために非常用ディーゼル発電機が使われているのを見て、化石燃料がいかに悪いものであるかを知った。 風力エネルギーをより効率的で安価にできれば、汚い燃料に由来する恐ろしい問題を(もちろんそれに伴う汚職も)解決できると思った。その後、 2 0 1 0 年 1 月 4 日、雪に覆われた神秘的なデンマークの地に降り立ったとき、 壁には「石油とガスに並ぶ風力発電」という大胆なビジョンが掲げられていた。再生可能エネルギーに対する情熱が解き放たれた私は全力を尽くし、わずか 7 年でその「クレイジーな」目標を達成することができた。
風力エネルギーの分野で成長した私だったが、ある日突然、別の大きな 問題の一部に自分も含まれていることに気づいた。風力エネルギーで成功 し目標を達成することに集中しすぎて、これまで私のキャリアでまわりにいたのは男性ばかりで、女性がほとんどいないことに気づいていなかった。 当時、会社で女性としては最年長だった私は、すでにその体制に挑戦して いた。しかし、Women in Energy というイベントに初めて招待されたとき、この分野にも女性の仲間が大勢いることが分かった。彼女たちの才能に刺 激を受け、感嘆の気持ちでいっぱいになった。2017 年にボゴタで開催さ れた One Young World サミットもまた、私を目覚めさせ、現実の世界の 広大さを見せてくれた。私の世界をひっくり返し、芯まで揺さぶり、そして私の新しい道を固めてくれた。私はこれまで以上に大きな声で立ち上がり、正義、表現、希望のために発言するようになった。
志を同じくするチェンジメーカーと一緒に、若いクリエイターのためにつくった動画共有プラットフォーム、Impactr を設立した。今の私の夢は、 Impactr を用いて、Ubuntuの精神を広め、人類を公平で公正な世界へと 導くこと。Ubuntuとはズールー語で “ I am, because you are”(あなたが いるから、私がいる)を意味する。自分自身のためではなく、お互いのために存在するという基本的な概念。それはつまり、誰も排除されたり、取 り残されたりしないということだ。Ubuntu の精神のもとではあらゆる形 や大きさの人が、理想の人生を送るチャンスを得られるだろう。そんな世界を実現するために、常に境界線を押し広げ、「クレイジー」なリーダーシッ プを、私は自由に解き放ち、自分の夢を実現するのだ!