ここが故郷と誇れるように

「故郷はどこ?」そう聞かれたら、どこにいても答えられる世界をつくる。 つまり、誰もが「ここが故郷です」と答えられる世界を。それが僕の夢だ。

地球上では今、紛争や人権侵害などによって、約2秒に 1 人の人間が自分 の意志と関係なく移動を余儀なくされている。そうしたなか、社会的統合 あるいは帰属といったことが、人類にとって最も重要な問題の一つとなっている。 社会的統合と言われても、複雑で縁遠いものに感じられるだろう。ベネズエラからコロンビアに移住して6年以上になる、この僕にとってもそう なのだから。過去 5 年間で 500 万人以上のベネズエラ人が政治的、経済的、社会的な危機を逃れるために国を出た。ベネズエラからの移住者や難民は 多くの場合、故郷のように感じてほしいと願う地域社会から温かく迎え入 れられてきた。だが、時として外国人嫌悪の感情やヘイトスピーチが湧き 上がることもある。こうしたことに直面すると、ただ自分らしくいるだけ で自分が間違っているような気持ちにさせられる。

地域社会が移住者や難民をどのように迎え入れるか。それはどのように 社会的統合が進むか、どんな成果をみんなで分け合うことができるかを大 きく左右する。僕自身について言えば、温かく迎え入れられた。夢を見て実現する機会を与えられたのだ。そのおかげで今の僕がある。兄姉ととも に、この地に故郷をつくり上げることができた。

僕たちはみな異なり、多様性こそ人類の持つ最大の財産である。だから、 違いを恐れる必要はない。地域社会のなかで一人ひとりがどのように移 住者や難民を迎え入れるかによって変化が生まれるのだ。では、どのよう に迎え入れるのが良いのだろうか? それは、僕が答えられる質問ではない。むしろ僕たち全員が答えを考え、それを具体的な行動という形にして いかなければならないのだ。

社会的統合は、魔法では起こせない。その過程で、数々の行動と公共政 策が必要だ。僕は 2018 年から、ソーシャル・プラットフォーム The Right to Disobey の一員として活動をしている。このプラットフォーム は、社会的不平等を解消するため、アートを使ったり、対話のための場を 設けたり、文化事業やコミュニケーション戦略を展開することによって、ラテンアメリカの 9 都市で 7,500 人のベネズエラ人の移住者や難民が社会 に根を下ろす支援をしてきた。

移住者である僕の声は、地球規模で故郷を夢見続けるたくさんの人々の 声と重なるだろう。どこにいても故郷にいると感じられる機会。僕たちみんなが、その機会を手にする権利がある。さあ、立ち上がろう!

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