世界が学ぶべき、フィンランドのソーシャルビジネス3選――エネルギー・食・AIで人類課題を解く北欧の知恵

フィンランドは、国連の関連機関が発行する World Happiness Report において、2018年から2024年まで7年連続で世界1位を獲得しています(※1)。同時に、ヘルシンキ発のスタートアップで毎年世界規模のサミット「Slush」を開催するなど、起業家活動が盛んな国としても知られています。

当社代表の市川がヘルシンキを訪問し、ソーラー充電バッグパックで知られるTespack社の COO・Caritta Seppä氏を訪問しました。(書籍 WE HAVE A DREAMでもフィンランド代表して掲載されています)

訪問を記念して、本記事ではエネルギー・食・AI の3分野で社会課題に挑む、フィンランド発の企業3社を紹介します。

Tespack ──「電源のない場所」をなくす

事業:ソーラー充電バッグ/ウェアラブル発電デバイスの開発・販売

今回訪問したTespack は、ペルー出身の Mario Aguilera 氏(CEO)と、フィンランド出身の Caritta Seppä 氏(COO)たち等が共同で立ち上げたスタートアップです(※2)。CEOのMario氏が南米の特殊部隊に所属していた際、インフラのない過酷な環境で『電力の有無が任務や人生の選択肢を大きく左右する』という確信を持ち、フィンランドのクリーン技術と組み合わせて事業化されました。

製品は世界70カ国以上で展開され、災害支援・遠隔地開発・防災用途などに活用されています。市川が対談した Caritta 氏は、COO としてビジネスのグローバル展開とパートナーシップ構築を担っています。

Tespackのプロダクトは、持ち運び可能で、太陽光発電に通信ホットスポットやプロジェクターを一体化させたシステム(Solar Media Backpack)により、インフラのない地域でも簡単に電気とデジタル教育環境を構築できるのが最大の特徴です。

送電網のような既存のインフラに依存せず、分散型・自立型モデルでサービスを提供することで、世界の「エネルギーにアクセスできない10億人」と「インターネットにアクセスできない40%の人々」(※2)に向けて、グリーンなインフラを提供しています。

Tespack 公式サイト →

Solar Foods ──空気から「食料」を作る

(出典:solarfoods.com)

事業:CO2と電気から微生物発酵でタンパク質「Solein®」を生成する次世代食料テクノロジー

Solar Foodsの主力プロダクト「Solein®」は、空気、電気、微生物(発酵)で生産されるタンパク質食品です。農地も畜産も必要とせず、環境負荷を大幅に抑えられます。

Solar Foods によると、Solein® の生産は従来の畜産(牛肉)と比較して、水使用量は約100分の1、土地使用量は約200分の1に抑えられるとされています(※3)。2024年には世界初の商業生産工場「Factory 01」が稼働を開始しました。

シンガポールでは食品認可を取得済みで、世界各国の食品メーカーとパートナーシップを進めています(※4)。

Solar Foodsは、従来の食糧生産が抱える「土地と天候への完全な依存」と「水や土などの地球資源の大量消費」という問題の解決に真正面から挑んでいます。気候変動や人口増加といった課題に直面する現代において、持続可能な食糧生産の新たな時代を切り開いています。

Solar Foods 公式サイト →

Aiforia ──病理診断AIで「医療アクセス格差」を縮める

(出典:aiforia.com)


事業:病理画像のAI解析プラットフォーム(深層学習×クラウド)

Aiforia は、病理医が顕微鏡で行う「がん細胞の検出・分類」を AI で支援するプラットフォームを提供しています。乳がん・肺がん・前立腺がん・大腸がん・胃がんの診断支援AIスイートを順次展開(※5)。

顧客にはハーバード医学部、マサチューセッツ総合病院、英国NHS、パリ公立病院(AP-HP)など世界的な医療機関が並びます。同社はフィンランド・Nasdaq First North Growth Market Finlandに上場しています。

Aiforiaの提供するプロダクトは、AIの専門知識がなくても利用が容易な点や、クラウドベースのサービスであることにも注目するべきでしょう。誰もが直感的に使いやすく、どこでも使えることで、技術の民主化が進み、医療の質をグローバルに底上げすることにつながっています。

Aiforia 公式サイト →

フィンランド発ソーシャルビジネスから学ぶ3つの観点

Born Internationalの視点

フィンランド企業は、国内市場の小ささを逆手にとり、最初から地球規模の課題をターゲットにしています。これまでみてきた3社のように途上国の未電化地域、世界の食糧危機、グローバルな医療格差といった問題です。初期段階からグローバルな社会課題をビジネスの主戦場として捉えているのです。

最先端の技術を現場の誰もが使えるシンプルなかたちに落とし込んでいる点は、Born Internationalの視点があってこそのものです。

「社会課題解決=コアビジネス」の完全な一致

3社ともビジネスモデルそのものが社会課題の解決に直結しています。

利益を出したあとで社会課題に取り組むのではなく、事業を拡大することがそのまま社会的インパクトの拡大に直結しています。

セクターを超えたパートナーシップの構築

社会課題の解決を自社だけでなく、NGOや大学・研究機関、他業種の企業などと積極的に協働し、エコシステム全体で解決に取り組む姿勢も見逃せません。ネットワークを広げることで、技術力を高めたり、グローバルでありながらも現場のニーズに即したプロダクトへのフィードバックにつながっていくのです。

まとめ

3社に共通するのは、社会課題を「事業」として解いている点、そしてフィンランドにおける研究機関・政府・市民社会との緻密な連携です。日本企業が学べる切り口は、技術や資本以上に、こうした「課題への向き合い方」のデザインそのものにあるのかもしれません。

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